京都国立博物館「 釈迦堂縁起」時を超えて語りかける絵巻の世界

京都国立博物館「 釈迦堂縁起」時を超えて語りかける絵巻の世界

修理完了記念 特集展示「重要文化財 釈迦堂縁起」

京都・嵯峨の地に静かに佇む清凉寺(嵯峨釈迦堂)には、「三国伝来」の釈迦如来像という、海を越えて伝わった仏像が本尊として祀られています。

その由来を語る壮大な絵巻が、室町時代に描かれた「釈迦堂縁起」。今回、令和2年度から令和4年度にかけて実施された修理を終えたこの貴重な絵巻が、2025年7月8日から京都国立博物館で公開されます。

絵巻に描かれた、釈迦像の旅

「釈迦堂縁起」は全6巻から成る長大な絵巻。インドから中国を経て、日本に渡ってきたという釈迦如来像の由来などを描いています。特筆すべきは、その絵を手がけたとされるのが、狩野派第二代・狩野元信(1477〜1559)であること。室町時代の絵巻ならではの色彩豊かでダイナミックな構図と、細やかな筆致が随所に見られ、美術史上でも高く評価されています。

狩野派といえば、江戸時代にかけて数百年にわたり日本画壇の中心に君臨した絵師集団。その基礎を築いたとも言われる元信の代表作として、「釈迦堂縁起」は狩野派の飛躍のきっかけのひとつとも位置づけられています。



重要文化財 釈迦堂縁起 巻第三(部分)伝狩野元信筆(京都・清凉寺)7月8日から展示(この場面は7月8日〜8月3日展示)


重要文化財 釈迦堂縁起 巻第三(部分)伝狩野元信筆(京都・清凉寺)7月8日から展示(この場面は8月5日〜24日展示)


重要文化財 釈迦堂縁起 巻第五(部分)伝狩野元信筆(京都・清凉寺)7月8日から展示(この場所は8月5日〜24日展示)

会期中は巻替あり、すべての巻が登場

展示は、前期(7月8日(火)〜8月3日(日))と後期(8月5日(火)〜24日(火))に分かれ、それぞれ異なる場面が展示されるため、可能であれば二度足を運んで全場面を味わいたいところ。特に、巻第五に描かれた「釈迦如来像の日本上陸」の場面は、後期のみの展示となります。

この機会に「絵巻」をじっくり見る体験の魅力も再発見してほしい。絵巻はスクロールするように物語が流れていく構造で、まるで映画のように時間と空間が展開されていく。ページをめくるのではなく、自らの手で巻物を解いていく感覚は、まさに“自分が物語を追体験する”ような没入感をもたらしてくれます。

文化財は、見るだけのものではなく、受け継ぎ、守っていくべき“生きた記録”なのだと、この展示は静かに語りかけてきます。

店名

京都国立博物館

営業時間

9:30〜17:00(金曜日は20:00まで開館。入館は各閉館の30分前まで)

住所

京都市東山区茶屋町527

アクセス

京阪七条駅 徒歩7分、市バス 博物館三十三間堂前下車 徒歩すぐ

定休日

月曜日 ※月曜日が祝日・休日の場合は開館、翌火曜日を休館

電話番号

075-525-2473(テレホンサービス)

公式サイト

https://www.kyohaku.go.jp/