
桂川のせせらぎとやさしい京懐石 松籟庵
桂川沿いのある松籟庵(しょうらいあん)は、元総理大臣・近衛文麿の別邸を改装した湯豆腐懐石の名店です。時代を感じさせる木造建築、庭越しに流れる桂川のせせらぎ、そして周囲に広がる嵐山の景色。そのすべてが、食事という枠を超えた“体験”として楽しめます。
保津川下りの船降り場や川沿いの茶店を横目に進み、緩やかな山道に差しかかると灯る行灯の明かりが見えてきます。松籟庵へと続くその細道は、まるで日常から少し離れた世界への入口のよう。
お店に入ると、畳敷きの和室の大きな窓から見える自然の風景。青々とした緑と桂川の流れを眼下に望むその場所は、喧騒から離れた、まさに時間がゆるむ特別な空間です。
湯豆腐を主役に据えた、やさしい京懐石「松葉」コース
松葉 4,500円
松籟庵で提供されるコースのなかでも、「松葉(しょうよう)」は昼限定の入門編。とはいえ、その内容は十分に満足感のある構成で、初めての訪問者にもぴったりの一品です。
食事は先付けからスタート。雪塩でいただく冷ややっこは、老舗・森嘉の豆腐本来の風味を引き出した一品。続く八寸には、色とりどりの旬菜が小さな器に並び、目にも楽しい盛り付けがされています。
主役の湯豆腐は、昆布だしで静かに温められ、ぽってりとした豆腐の食感が心に沁みる優しい味わい。
次に、季節の野菜や豆腐を使った彩り豊かな盛り合わせの八寸盛り。その後は、揚げ出し豆腐が登場。外はカリッと、中はとろり。出汁との相性が絶妙。最後に白ご飯、香の物、ちりめん山椒が添えられ、締めくくりには豆腐アイスクリームや生八ツ橋といった京の甘味がさらりと口の中を整えてくれます。
料理は、派手さよりも“引き算”の美学。素材そのものの味を生かし、過剰な演出はせず、でも確実に印象に残る。そんな京都ならではの料理哲学がしっかりと息づいています。
京都の四季とともに、心ほどけるひとときを
松籟庵の魅力は、料理そのものだけにとどまりません。料理を支える空間、もてなしの姿勢、そして窓の外に広がる風景すべてが「京都を味わう」ために計算され尽くしています。
なかでも「松葉」コースは、時間に余裕のある観光の合間に、ふと立ち寄るのにちょうどいいバランス感覚を持ったコース。食べた後の満足感もさることながら、店を出る頃には心までも満たされている自分に気づくはずです。
せっかく嵐山を訪れるなら、観光の合間に一呼吸おける場所があると旅の質が変わります。松籟庵は、そんな「心の中の記憶に残る京都」を提供してくれる、数少ない存在です。
店名 | 松籟庵 |
営業時間 | 11:00 - 17:00(金土日祝 ~20:00 ) |
住所 |
京都市右京区嵯峨亀ノ尾町官有地内 |
アクセス |
京福 嵐山駅 徒歩15分 |
定休日 | 水曜日 |
電話番号 |
075-861-0123 |
公式サイト |
http://www.shoraian.jp |