〈TOKINOHA〉から〈時の端〉へ 器と職人の未来※テスト用

〈TOKINOHA〉から〈時の端〉へ 器と職人の未来※テスト用

2009年、築古の町家を間借りしていた北区の拠点から山科の清水焼団地に移転し、電動工具を握り、半年かけて住まいと店を手づくりしたその場所が、ブランド〈TOKINOHA〉の出発点でした。京都で"五代目 清水六兵衛"のひ孫として生まれた清水大介さんが妻の友恵さんと始めた活動です。




「大学までは建築を学んでいましたが、陶芸の面白さに惹かれて飛び込みました。どうせやるなら“今の暮らしに合う清水焼”を提案したかったんです」



当初は夫婦それぞれの作家作品を並べるギャラリー色の強い店構えでしたが、「若い世代でも使いやすい、料理が盛られて完成する器をつくろう」と方向転換。白や黒のベーシックでフラットな器は、陶芸愛好家よりも一般の主婦や若い料理人に熱く支持され、注文は右肩上がりに伸びていきました。

直販とオーダーメイド事業の立ち上げ

2015年には実家を改装し、カフェと体験工房を併設した〈HOTOKI〉を岩倉にオープン。2年後、スタッフが増えたことを受けて法人化するなど順調に見えた事業でしたが、「取引先が増えてもスタッフに十分な給与を払えず、違和感しか残らなかったので、全国に50社あった卸先を1日で全部やめたんです」

2019年、"職人に正当な報酬を払えるようにするため" 価格を是正し、販売を99%直販へ。並行して、D2Cブランドへ本格的に移行するため山科の本店を全面改装。レストラン向けオーダーメイド事業<素—siro>を立ち上げ、「料理とともに完成する器」をシェフと共同開発する道を選びました。




東山の複合施設Com-ionに誕生した〈時の端〉

2025年春、清水さんは東山五条の複合施設〈Com-ion〉に、新業態〈時の端〉をオープンさせました。ここでは1つ1つ器ごとのエピソードがキャプションで解説されており、「器のストーリーと出会う」体験を提供しています。

海外の観光客や近隣ホテルのゲストが、レストランで見た器を求めて足を運ばれることもあり、SNS経由の来店も増えています。

職人が“長く働ける”スタジオ構想

「陶芸界には、薄給の下積みか孤独な独立かの二択しかありません」。このショップには工房が併設されており、作り手との直接的なつながりを感じてもらう場を提供したいと考えています。

そして今は、明確な評価制度と給与テーブルを整備し、「作り手が安心して創造できる第三の道」を形にしようとしています。





清水さんは、清水焼の現状を変えるため積極的に「清水焼」を名乗ります。サンフランシスコでの展示では、“Made in Kiyomizu”の信用が即決受注につながりました。「清水焼は“何でもあり”だからこそ自由。その自由を若い世代が掲げればブランドは必ず更新されます」。

器と長く付き合う三つのヒント

そんな清水大介さんに、器と長く付き合う秘訣を聞くと3つのヒントをくれました。

1. 「朝のコーヒーでお気に入りの一客を使う」 少し特別な時間になります。
2. 「作り手の顔や物語を知る」 思い出が愛着を深めて簡単に捨てられません。
3. 「欠けても金継ぎして使い続ける」 傷も物語になり器が育ちます。


山科で育まれてきたTOKINOHAが、新たに東山に開いた“器の物語を紡ぐ店”〈時の端〉。ここは、山科の工房のサテライト工房でもあり、TOKINOHAの職人たちが日々手を動かしています。

京都のまちなかに多くある陶芸ギャラリーではなかなか出会えない“作り手の姿”を、ここでは間近に感じることができます。器が生まれる瞬間を見て、触れて、持ち帰る——そんな体験を通じて、百年の時を刻んだ蔵の空間に、新たな時間が流れはじめています。

〈時の端〉は、器と人、そして職人の未来をつなぐ場所。そこには、働き方の新しいかたちを探る静かな挑戦も息づいています。

店名

時の端

営業時間

10:00 - 18:00

住所

京都市東山区堀池町382-1

アクセス

地下鉄 東山駅から徒歩2分

電話番号

075-606-5344

公式サイト

https://toki-no-ha.com/