伝統の粽に宿る、京の美意識 ― 川端道喜の「水仙粽」

伝統の粽に宿る、京の美意識 ― 川端道喜の「水仙粽」

川端道喜は、室町時代の1503年創業の御粽司。武家から転じた初代が京都で餅屋を開いたことに始まり、約500年以上の歴史を持つちまきと生菓子が有名な老舗です。

皇室御用の菓子司として知られており、応仁の乱の後から明治はじめに都が東京へ移るまでの350年にわたって、天皇に朝の食事として供する「御朝物」を毎朝献上されました。京都御所には今も「道喜門」と呼ばれる「御朝物」を献上する際に通った門が正門の東隣にあり、かつての出入りを静かに伝えています。

また、茶道と深い関わりがあり、古くは千利休の時代から茶人たちに親しまれました。とくに裏千家などの茶席で茶菓子として供されることが多く、初釜や特別な茶会で提供される「道喜粽」や、宮中から許可された新年の菓子「菱葩餅(ひしはなびらもち)」などが有名です。


川端道喜の和菓子づくり

川端道喜の和菓子づくりは、餡や砂糖、葛粉や餅粉といったシンプルな原料に余計な添加物を加えず、素材本来の風味を生かすことを第一にしています。
その日の温度・湿度をふまえて、水は硬さを見極め、火入れは強すぎず弱すぎず香りが飛ばないようにします。季節が変われば火力と時間も変え、音、泡の大きさ、香り立ちを見極めて同じ味へ毎日寄せていきます。
大量生産や機械化には向かわず、歴代当主の手の感覚と経験で仕上げる姿勢が、何世代にもわたって変わらぬ信頼を支えています。

水仙粽

川端道喜 水仙粽

水仙粽 5束 3900円

水仙粽の原材料はいたってシンプル。用いられるのは、吉野本葛と白砂糖と水のみ。炊き上げた生地を香り高い笹の葉で包み、いぐさで美しく束ねます。
包みを開くと、透明感のある葛が生む、つるんとしたのどごしと、もっちりとした弾力。そして、噛むほどに広がるほのかな甘みと笹の清々しい香りが広がります。

水仙粽は大量生産をせず、出来の良い分だけを渡すやり方を守っており、冷蔵保存ではその魅力が損なわれるため、常温で、その日のうちにいただくことを推奨されています。特に暑い日には、冷やさずそのまま口に含むことで、葛のひんやりとした感触とやさしい甘さが、身体をすっと包み込むような癒しを与えてくれます。

数ある京都の和菓子のなかでも、口にするたびに静かに五感を研ぎ澄まされるような、上質な時間が広がる歴史ある逸品です。

店名

川端道喜

営業時間

09:30 – 17:30

住所

京都市左京区下鴨南野々神町2-12

アクセス

地下鉄「北山駅」より徒歩2分

定休日

水曜日

電話番号

075-781-8117

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