“観光地じゃない”からこそできる、長岡京の魅力発信
「また京都、だけどちょっと違うところへ行きたい」。そんな気分の日にこそ訪れてほしいのが、京都市の西に位置する“長岡京市”です。
歴史をひも解けば、平安京の前に一時的に都が置かれたこの地には、静かに時を重ねてきた文化や、まちの人たちの想いが息づく“深い魅力”がありました。
今回は、長岡京市商工観光課の担当者さんにお話を伺い、観光地としての“静かな進化”を探ってみました。
「観光地ではない」まちが描く、次の京都のかたち
インタビューの冒頭、意外な言葉が飛び出しました。
「正直、長岡京は特別な観光地ではありません。だからこそ、たくさんの人を呼び込むのではなく、一人ひとりの満足度が高い観光を目指しているんです」
たしかに、長岡京は清水寺や嵐山のような“圧倒的知名度”はありません。でもその分、リピーターにこそ刺さる「質の高い体験」が用意されているのです。
「京都は何度も行ったけど、新しい発見が欲しい」「混雑を避けて、静かに文化や自然を感じたい」
そんな旅人にとって、長岡京はぴったりの場所です。
都が置かれた地、そして戦国ロマンの舞台
「長岡京」は、平安京に遷る直前の約10年間、都が置かれていた歴史があります。知名度は低くとも、歴史好きにとっては見逃せないスポットです。
また、戦国時代に明智光秀と豊臣秀吉が激突した「山崎の戦い」の舞台にもなっており、光秀ファンや“戦国クラスタ”にも密かに人気とのこと。
近年は、大河ドラマ『麒麟がくる』、『べらぼう』の放送をきっかけに、関連地を巡る人も増加。長岡京市が観光の選択肢に入るようになったといいます。
花手水とSNSが繋いだ、“次世代型”のお寺体験

観光地としての人気を支えるのが、SNS時代の象徴ともいえるスポット「楊谷観音 楊谷寺」です。こちらは“花手水”発祥の地として知られ、四季折々の花が美しく飾られた手水鉢がInstagramなどで注目を集めています。
山を少し登った先にあるため、簡単には行けない立地。でもその“ひと手間”があるからこそ、訪れた人の満足度は高く、アジア圏の観光客や情報感度が高い人たちを中心に人気が広がっています。
ナイトファーム、左官体験、竹細工。“こと”で魅せる長岡京
長岡京の真骨頂は、体験型観光の充実にあります。
代表的なのは「竹」。地域のシンボルでもあり、竹を使った箸や茶杓づくりなど、伝統工芸体験が可能。「買って帰る」以上に“思い出になるモノづくり”が楽しめます。
さらに今注目を集めているのが、「ナイトファーム体験」。夜にライトアップされた畑で京野菜を収穫し、その場でピザを焼いたりBBQを楽しんだりするという新感覚の体験型ツアーです。暑さを避けて涼しく楽しめることもあり、特にファミリー層や若いカップルに人気とのこと。
そして、少しマニアックな“左官体験”や光る泥団子作りの体験も。京都発祥とされる左官文化の職人技を活かした泥団子づくり体験は、大人も童心にかえるような不思議な魅力を放っています。
季節を五感で楽しむ。長岡京の「ベストシーズン」は春・初夏・秋
長岡京には、観光客が集中する「三大ベストシーズン」があります。

・4月中旬〜5月上旬:長岡天満宮のキリシマツツジが満開。タケノコの旬がピーク。


・6月:楊谷寺の「あじさいウイーク」。約1ヶ月、花手水と境内の紫陽花が美しい。
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・11月〜12月:紅葉の名所「光明寺」で、色づくもみじを堪能できる。

また、秋のイベントとして「長岡天満宮の花灯路」も見逃せません。かつて嵐山や東山で開催されていた幻想的な光の装飾が、今はこの西山エリアで楽しめるようになっています。
滞在時間を伸ばす仕掛けづくりと、次の10年に向けて
現在、長岡京市内の宿泊施設は数軒のみという限られた状況。それでも2026年には新たな宿泊施設が開業予定であり宿泊客向けの新たな動線づくりも計画中です」と担当者さん。
方向性は明確で、「プロの観光ガイドとの連携や、体験型の高付加価値な観光を軸に進めていきたい」とのこと。“来た人が満足する場所”へ。そんなブレない姿勢が、まちの魅力をゆっくりと育んでいます。
“通”の京都旅に、長岡京という選択肢を
観光地とは“にぎやかで派手な場所”だけではありません。長岡京は、歴史・文化・自然・体験のすべてが「静かに、深く」訪れる人に寄り添ってくれるまちです。
喧騒から少し離れた先に、ふと心に残る風景がある。その風景をつくっているのは、地域で暮らす人たちの丁寧な営みと、観光を一過性で終わらせないための地道な努力なのかもしれません。
次の京都旅。地図の西側に、少し足を伸ばしてみませんか?

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