学び京都観光白書 京都における観光動向および課題と対策、施策展開を解説

京都観光白書 京都における観光動向および課題と対策、施策展開を解説

新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな打撃を受けた観光業界ですが、コロナ禍の収束に伴って状況は大きく改善しつつあります。世界的な観光都市として有名な京都も例外ではありません。

この記事では、世界、日本全体、そして京都における直近の観光動向を分析するとともに、京都における観光の課題と対策、また令和6年の施策展開について詳しく解説します。

 

観光の動向

ここ数年における世界経済の動向をみると、世界的パンデミックとなった新型コロナウイルスの感染拡大によって2020年は大きく減退しましたが、2021年以降は回復傾向にあります。
国際通貨基金(IMF1)の調査結果によれば、2023年における世界全体の実質経済成長率は3.2%となりました。こうした世界経済の回復傾向を受け、観光の動向も大きく改善傾向がみられます。
参照:国土交通省「観光白書」

 

世界の観光動向

世界の観光動向について、直近の2022年と2023年の主要データをみていきます。

 

2022年の動向

2022年における世界各国・地域の国際観光収入をみると、米国が1,369億ドルで1位、スペインが729億ドルで2位、英国が676億ドルで3位となっています。日本は92億ドルで26位(アジア地域では6位)となりました。
同様に国際観光支出をみると、やはり米国が1,153億ドルで1位ですが、次いで中国が1,148億ドルで2位、ドイツが897億ドルで3位でした。日本は45億ドルで43位(同11位)となっています。

 

2023年の動向 

UN Tourismによる2024年1月の発表によれば、2023年における世界全体の国際観光客数は12億8,600万人(前年比33.9%増)であり、新型コロナウイルス感染症の影響から大きく改善している状況がみられます。
これを地域別にみると、欧州を訪れた国際観光客数が7億40万人(前年比17.4%増)、アジア太平洋地域が2億3,340万人(前年比155.1%増)、米州が1億9,830万人(前年比26.6%増)となっています。いずれも、前年と比較してさらに改善していることが確認できます。

 

日本の観光動向

2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって全国の観光地や主要産業は厳しい状況となりましたが、2022年10月に設定された「水際措置」の大幅緩和や、全国旅行支援の開始によって観光需要が急速に回復し、全国各地の観光地が再び活性化しています。
世界観光機関(UN Tourism2)の調査によれば、2022年における日本での外国人旅行者受入数は383万人で、世界42位(アジアで5位)となっています。
訪日外国人旅行者数をみても、2022年6月に外国人観光客の受入を再開して以降徐々に回復をみせ、2023年には東アジア地域を中心に大きく増加し、同年10月には2019年同月を超え、年間2,507万人となりました。

 

京都の観光動向

直近の2023年における京都の観光動向について、主な数値からみていきます。

  • 観光消費額:1兆5,366億円
  • 年間観光客数:5,028万人
  • 年間宿泊客数(実人数):1,475万人
  • 外国人宿泊客数(同上):536万人

いずれも、コロナ禍が収束して以来、近年最高の数値となっています。京都も国内外の主要観光都市同様、大幅な改善を示していることが明らかです。

 

京都観光の課題と対策

世界有数の観光都市である京都は、最先端を行くさまざまなサービスが誕生する街である一方、新たな課題にも直面しています。京都観光が抱える課題と対策について、京都観光推進の中核を担う京都市観光協会の主な施策を中心にみていきます。

 

「京都観光モラル」の策定によるマナー啓発

一部地域での混雑やマナー問題といった観光課題を解消するため、2020年11月に「京都観光行動基準(京都観光モラル)」を策定し、関係者や観光客へ広く発信しています。持続可能な京都観光を創りあげていくことを目指し、観光に関わる全ての方に大切にしてほしい内容をまとめた行動基準です。

 

観光快適度の可視化

混雑緩和策として、スマホのGPS(位置情報)機能から観光快適度を予測し、結果を「観光快適度マップ」として提供しています。

 

閑散期対策(時期の分散)

観光の閑散期(夏・冬)における誘客施策として、夏期と冬期に通常であれば観覧できない国宝等の文化財を特別に公開しています。
京都市観光協会公式ライブカメラ https://www.youtube.com/c/DMOKYOTO

 

「とっておきの京都プロジェクト」(場所の分散)

伏見、大原、高雄、山科、西京、京北の市内6エリアを対象として、「知る人ぞ知る」隠れた魅力や新たな観光情報、地域のイベント情報などを発信することで、観光地域(場所)の分散化を図っています。
とっておきの京都プロジェクト https://totteoki.kyoto.travel/

 

朝・夜観光の推進(時間の分散)

魅力的な朝と夜のコンテンツを紹介することによって観光客の時間を分散化させるため、京都観光Naviに「京都朝観光・夜観光」特設ページを設定・運営しています。観光客の訪問時間を分散させるため、魅力的な朝と夜の観光コンテンツを紹介する特設ページ「京都朝観光・夜観光」を設置しています。

また2002年度から2021年度までは「花灯路」という名称で、嵐山と東山でライトアップイベントを開催していました。嵐山では紅葉シーズン後、東山では桜のシーズン前に実施していたようです。2022年度からはライトアップ用機材の貸し出し事業として継続しており、伏見稲荷大社のライトアップなどで活用されています。
花灯路・ライトアップ支援事業 https://hanatouro.kyoto.travel/

 

京都におけるインバウンド顧客誘致と消費拡大

京都におけるインバウンド顧客誘致と消費拡大についてみていきます。

 

京都観光による消費拡大へ向けたインバウンド関連施策

観光は、日本が力強い経済を回復するために極めて重要な成長分野です。中でもインバウンド需要は、深刻な人口減少や少子高齢化が進む中にあって、日本経済の成長や全国各地域の持続的な発展に欠かせない要素です。 
京都は数多くの観光資源を有し、観光は基幹産業のひとつとして有名です。
中でも中核となる京都市の観光政策を担う京都市観光協会は、2017年より「日本版DMO(*1)」に認定され、2023年3月に観光庁より「先駆的DMO(*2)」にも選定されました。

*DMOとは:Destination Management/Marketing Organizationの頭文字の省略で、観光地域づくりを推進する法人を指す。
(*1)持続可能で国際競争力の高い魅力ある観光地域づくりを行う「世界的なDMO」を目指す「観光地域づくり法人(DMO)
(*2)観光庁が戦略的に支援を実施するために募集・選定したDMO
2024年4月、京都市観光協会はインバウンド向けの主要施策として「観光コンテンツ造成支援ハンドブック」を発行し、インバウンド顧客誘致と消費拡大への啓蒙活動を推進しています。

また、京都市および京都市観光協会は、インバウンド顧客を誘致してさらなる観光地域へと発展させるために、事業者や一般市民を巻き込んださまざまな取り組みも実施しています。

 

令和6年度における主な取り組み

京都では、持続可能な京都観光の実現に向けた令和6年度におけるさまざまな取り組みも推進しています。取り組みの趣旨は下記のとおりです。

  • 一部観光地における混雑や観光課題対策の推進
  • 「京都観光行動基準(京都観光モラル)」の普及・実践による、市民生活と観光のより一層の調和を推進
  • 京都観光の質・満足度を高める取り組みを推進し、観光・文化・経済の好循環を創出

具体的な各施策については、上述の「令和5年 京都観光総合調査結果【概要】」4頁をご参照ください。

 

まとめ

世界、日本全体、そして京都における直近の観光動向、および京都における観光の課題と対策、令和6年の施策展開について詳しく解説しました。
観光は日本および京都にとって重要な産業のひとつであり、観光振興によって大きな経済的メリットも期待できます。
この記事を読んで、観光に関する事業展開や活性化を考える事業者は是非お役立てください。