京都観光白書2024 観光客の移動における交通インフラの課題と展望

京都観光白書2024 観光客の移動における交通インフラの課題と展望

観光地として国内のみならず世界的にも著名な京都ですが、その中心である京都市では、観光に関するさまざまな課題を抱えています。
特に、コロナ禍後に外国人のインバウンド観光客が復活し、活況を呈している反面、オーバーツーリズムの問題点も指摘されています。

 

この記事では、京都市を訪れる観光客の移動に際しての交通インフラの抱える課題と取り組み、また将来展望について詳しく解説します。

 

京都市内における交通インフラの状況

観光都市京都の中核をなす京都市ですが、市内の交通インフラをみると、中心部は鉄道やバスのネットワークなどにより、ほとんどが公共交通圏域内となっています。、市内周辺部は鉄道駅へのアクセスを基盤としたバス路線が整備されていますが、一部で公共交通圏域外のエリアが存在しています。

その一方、京都市でも中山間の地域では、路線バスの運行が維持できなくなり、各地域が主体となった輸送(自家用有償旅客運送など)が実施されている地域も散見されます。

参照:京都市内の公共交通に係る課題整理の方向性

 

日本人観光客の上位訪問地

日本人観光客の訪問地上位10箇所は次のとおりです。清水・祇園や京都駅、四条河原町周辺が上位の人気となっています。

1 清水・祇園周辺

2 京都駅周辺

3 河原町三条・四条周辺

4 嵯峨嵐山周辺

5 二条城・壬生周辺

6 きぬかけの路周辺

7 東山七条周辺

8 伏見周辺

9 岡崎・蹴上周辺

10 銀閣寺・哲学の道・百万遍

 

外国人観光客の上位訪問地

外国人観光客の訪問先上位10箇所についてみると、清水寺や二条城、伏見稲荷大社、金閣寺などに人気が集中しています。

1 清水寺

2 二条城

3 伏見稲荷大社

4 金閣寺

5 ギオンコーナー

6 嵐山・嵯峨野

7 祇園

8 八坂神社

9 京都御所

10 銀閣寺

 

 

日本人観光客の利用交通機関

日本人観光客の市内利用交通機関の主な内訳を見ると、鉄道・路線バス(市内バス含む)の公共交通、そして徒歩がその大半となっています。京都市内における観光シーズンの休日の場合、特に朝の時間帯で京都駅へ観光客が集中している傾向があります。

外国人観光客の利用交通機関

外国人観光客の市内利用交通機関の主な内訳は次のとおりです。日本人観光客と同様、主な利用交通機関としては、鉄道や路線バスと徒歩が中心となっています。

出典:京都観光総合調査(令和元年)

 

京都市内観光に際する交通上の課題と取り組み

京都市では、モータリゼーションの急速な進展に伴い、古くは昭和40年台の半ばから道路渋滞が深刻化しました。こうした状況への対策として、京都市は昭和48年に「マイカー観光拒否宣言」を行い、その後、平成に入ってからは、毎年秋の観光シーズンに臨時の交通規制をはじめとする観光地交通対策を実施してきました。ここ最近では、雑踏対策にも注力しています。

参照:京都市における公共交通(鉄道)と主要な観光地等

 

課題

自家用車や観光バスの観光客の増加により、とくに観光地周辺では交通混雑滞が慢性化しており、主な移動手段となるバスやタクシーも影響を受けています。

また、京都駅に人が集中しすぎることで、駅構内や周辺が混雑するだけでなく、バス車内が満員で利用できない人が出たり、タクシー乗り場で長い行列ができることが日常化しています。

 

取り組み

こうした状況を改善するため、京都市では解決へ向けたさまざまな取り組みを推進しています。

バス・タクシーの効果的な利用促進

オーバーツーリズムの解消と観光客の利便性向上を目指して「お越しバス」および「観光特急バス」を運行しています。「お越しバス」ではおもな市内観光地をコースで回れます。「観光特急バス」は有名観光地の最寄り停留所だけに停まる、いわば特急バスです。

利用条件は下記サイトをご参照ください。

お越しバス公式HP

観光特急バス公式HP

 

 

また、観光客の行動をスムーズにするため駅前でのタクシー利用を促進しているほか、レンタサイクルの対応にも力を入れています。京都市内中心部は自転車で風を感じながらどこにでも気軽に行けるので、神社仏閣などさまざまな魅力的スポットを巡るにはレンタサイクルが非常に便利です。

バスやタクシーの担い手不足対策のため、事業者の処遇改善に関するPR活動も支援しています。

 

京都駅への一極集中緩和に向けた取り組み

京都駅の混雑を緩和するため、山科駅や東福寺駅、地下鉄などのサブゲートを活用したルートの提案や、バス停案内の充実を図っています。

 

車移動に関する取り組み

京都市内では、自動車流入抑制策や観光バスの路上滞留対策を進め、自動車交通における効率化・適正化を図っています。

参照:「観光バスの路上滞留対策等強化事業」 (報告書)

 

 

オーバーツーリズムの弊害について

前章までで述べた観光客の増加に伴い、地元住民がバスに満員で乗れない、タクシー待ちの行列が長いなどの影響を受けているほか、市街地の駐車場が不足するなど問題が深刻化しています。

さらに、観光客による騒音やごみの増加、短期滞在向け宿泊施設の増加による住宅費の高騰も住みにくさを助長しています。

また、地元文化が観光客向けに商業化されてオリジナル性が薄れることや観光地が過密状態で静寂や風情が失われることで、観光客が本来求めていた体験ができなくなる場面も増えています。

 

今後の展望「歩くまち・京都」

京都市では、平成22年1月に交通マスタープランである「歩くまち・京都」総合交通戦略を策定しました。「存公共交通に関する取り組み」「まちづくりへの取り組み」「ライフスタイルに関する取り組み」の3つの取り組みに基づく88の実施プロジェクトを推進しています。

また、京都に関わるすべての人の行動規範として、全国に先駆けて初の「歩くまち・京都」憲章を制定しました。それぞれの取り組みについて解説します。

 

既存公共交通に関する取り組み

京都市では、主要交通機関である地下鉄やバスの利便性向上に向けたダイヤ改善や、京都の鉄道・バスのネットワークを活用した市内共通の乗車券である「京都フリーパス」を提供しています。
また、京都駅南口駅前広場における整備計画にも取り組んでいます。  

 

まちづくりへの取り組み

まちづくりへの取り組みとしては,同戦略におけるシンボル的なプロジェクトとされている京都市東大路通の自動車抑制と歩道拡幅や、四条通における歩道拡幅と公共交通優先化を推進しています。

また、広域的なパークアンドライド計画を準備し、新たな駐車施設整備を抑制して既存の駐車施設を有効活用する「京都市駐車場条例」を平成23年度に施行しています。   

 

ライフスタイルに関する取り組み

ライフスタイルの取り組みとしては、各種のポスター掲示や憲章のアナウンスや放映などを通じて、スローガンである「歩くまち・京都」の普及・啓発活動を進めています。


また、京都市内の一般市民や転入者、また小学生などを対象として、幅広くそれぞれのライフスタイル転換を促す「スローライフ京都」プロジェクトを強力に推進しています。 

参照:「歩くまち・京都」総合交通戦略の今後の方向性やその実現に向けた施策などについて 

 

まとめ

世界的な観光都市である京都市は、観光客の急増にともない観光による発展をする反面、多くの課題も抱えています。この記事を読んで、京都市における交通インフラの課題や将来展望などについて関心のある方は是非お役立てください。