
三味洪庵で味わう、天重と十割蕎麦の雅なひととき
京都・東山区、白川のせせらぎを望む静かなエリアに、本店を構える「三味洪庵」。そのルーツは、幕末の文久元年(1861年)に創業した「大津屋」にまでさかのぼります。
初代の岡島嘉平は、岩倉具視の命により、京の台所を支えるために食材の仕入れと供給を担いました。時代のうねりの中で、三味洪庵は単なる蕎麦屋にとどまらず、京都の食文化を守り伝える存在として根を張ってきました。
現在では、老舗の蕎麦店としてだけでなく、ちりめん山椒や佃煮、西京漬けといった京の味を全国に届ける食品製造業も手がけ、伝統と革新を併せ持つ企業へと成長を遂げています。
店舗の本店は、築100年超の町家を活かした建築で、白川を望むテラス席がとくに人気。春には桜、夏には緑陰、秋には紅葉、冬には雪景色と、季節の移ろいが一皿一皿の背景に広がります。
蕎麦へのこだわりも徹底しており、国産の蕎麦の実を石臼で挽き、自家製粉。十割蕎麦ならではの力強い香りとコシを追求しながらも、繊細な味わいに仕上げています。
食べ応えと上品さを兼ね備えた「天重とお蕎麦」
天重(海老とお野菜)とお蕎麦 2,500円
今回いただいたのは、「天重(海老とお野菜)とお蕎麦」のセット。見た目からして美しい盛り付けに、期待が膨らみます。
まず目を引くのは、天重の存在感。プリッとした天使海老が2尾、堂々と横たわり、そのまわりには彩り豊かな野菜天ぷらが並びます。ナス、カボチャ、サツマイモ、オクラなど、その時々の旬の野菜が厳選され、米油でカラリと軽やかに揚げられています。驚くのはその衣の軽さ。しっかり揚がっているのに、油っこさがまったくなく、食材の味を引き立てています。特製のタレは甘すぎず辛すぎず、絶妙な塩梅でごはんに染み込み、最後まで箸が止まりません。
添えられる蕎麦は、「せいろ(冷)」と「かけ(温)」から選べるのがうれしいところ。この日は冷たいせいろをチョイス。鼻を抜ける蕎麦の香り、きりっとしたのどごし、そして少し濃い目のつゆが三味洪庵らしい潔さを感じさせます。十割蕎麦特有の強いコシを保ちつつ、舌触りはあくまでなめらか。職人の技術と素材への誠実さが、ひとくちごとに伝わってきます。
この組み合わせは、重厚感と軽やかさのバランスが秀逸。食べ応えがありながらも、食後感は驚くほど軽やか。観光途中でも重くなりすぎず、次の予定へ気持ちよく歩き出せる一膳です。
京都でしか味わえない、“品のいい満足感”を
三味洪庵の「天重とお蕎麦」は、素材・調理・景観の三拍子がそろった京都ならではのランチセット。老舗の技が光る一皿に、旅の疲れもすっとほぐれていきます。
テラス席では、白川の流れを感じながら、蕎麦と天ぷらを味わえるという、まさに五感で楽しむ食事体験が待っています。古都の風情とともに、体と心を満たすランチを探している方に、ぜひおすすめしたいお店です。
店名 | 三味洪庵 本店 |
営業時間 | 11:00 - 14:30, 17:00 - 20:30 |
住所 |
京都市東山区三条通北裏白川筋西入ル石泉院町393 |
アクセス |
地下鉄 東山駅 徒歩1分 |
定休日 | 月曜日 |
電話番号 |
050-5589-8421 |
公式サイト |
http://www.sanmikouan.jp |