梅体験専門店「蝶矢」で楽しむ「梅」体験
河原町三条で「梅」を仕込む時間
河原町三条の交差点を東に歩いてすぐに、蝶矢の新しい梅体験の拠点、梅体験専門店「蝶矢」があります。人気の梅体験専門店「蝶矢」六角店につづき、観光客向けにオープンした店舗で、インバウンド対応として英語ができるスタッフも常駐し、英語と中国語の冊子も常備。入口では季節ごとに変わる梅ドリンクのテイクアウトスタンドも併設されています。
梅をめぐる文化と歴史に触れる
体験は、店内奥のコの字型カウンターで楽しめます。壁のディスプレイには、ボトルに仕込んだあとの変化がわかりやすくボトルで再現されています。
体験がはじまると、はじめに「梅とは何か」という案内から始まりました。スタッフの野村さんが冊子を広げ、アンズやスモモとの違いを解説してくれました。
「梅は2千年前に中国から漢方薬として伝来しました。千年後の食文化として広がり、梅酒は300年前には誕生したが、当時は嗜好品だった。」と野村さん。
蝶矢は1914年に創業。「日本の梅酒の魅力を世界に広めていきたい」という思いで梅酒つくりがスタートしたそう。

たしかに『万葉集』は桜よりも梅を詠んだ歌が多く、平安貴族たちは邸宅に梅を植えて香りを楽しんでいたことや、江戸時代には梅干しが武士の保存食だったことを思えば、梅は日本人の歴史そのものを支えてきたといえます。
蝶矢での仕込みは、そんな長い歴史の続きを、自分の手元で再現する小さな実験のように感じられます。
テイスティングしながら梅と砂糖を選ぶ

つぎに、「梅シロップ」か「梅酒」のどちらを作るのかを決めて、その後、梅と砂糖をそれぞれ5種類ずつテイスティングしながら選びます。
梅酒の場合は、お酒も4種類から選べます。今回は完成までの時間が短く、およそ7日で飲めるようになる梅シロップを選択。

体験で使う梅は契約農家が手摘みしたものを、収穫直後にマイナス40℃で急速冷凍して鮮度を保つことで、酸化を止めて新鮮さを閉じ込めているのだそう。
梅は、完熟南高、白加賀、福太夫、鶯宿(おうしゅく)、パープルクイーンの5種類それぞれのシロップをテイスティングしながら決めます。青さが際立つもの、香りが花のように立ち上がるもの、酸が余韻として残るものと、それぞれの個性がはっきりと現れます。
砂糖は、氷砂糖、こんぺい糖、てんさい糖、有機アガベシロップ、はちみつから選べます。糖の種類によって熟成スピードもわずかに異なり、完成後の香りやコクの差を生むのだそう。今回は、梅は穏やかで上品な味わいの「鶯宿」、砂糖は色あざやかな「こんぺい糖」にしました。

つづいて、選んだ梅のガク(萼)を、ひとつずつ外していきます。力を入れすぎると果実に傷がつくため、この作業に集中すると素材への愛着が湧いてきました。
瓶詰めの音と色を楽しむ
下ごしらえを終えた梅を、ガラス瓶にひとつ落としたあと、金平糖を一袋サラサラと重ねる。音がリズムになり、層ができていくこの作業を5回繰り返すと梅の丸みと粒が瓶の中で重なってきれいな仕上がりに。

梅と砂糖を重ねると、浸透圧によって梅の果汁が染み出し、砂糖が溶け、再び果実に戻る。それが何度も繰り返され、味がまろやかに変わっていくのだそう。瓶詰めを終えると、漏れないようにシリコンキャップ、さらにマスキングテープでしっかり蓋をするので持ち帰り時も安心です。
野村さんの丁寧な説明にそって作業を終えたあと、最後に「おいしくなりますように」と英語で祈っていただきました。
梅シロップなら7日、梅酒なら1か月で仕上がります。完成までは、直射日光をさけて、1日1回振って少し撹拌し、冷蔵庫で保管してなるべく早めに召し上がってくださいとのこと。(梅酒は、完成後も室温で保管OK)
海外の観光客の反応

河内店長は「旅行予約サイトやInstagramからの来店も増えていますが、もともとチョーヤブランドをすでに知っていて、自分でオリジナルを作れると知って予約される方も多い」と語ってくれました。
「とくに香港や台湾からの訪問客が多い一方、欧米の旅行者は、梅自体まだ知らない方も多いので、はじめに梅シロップを飲んでから気に入っていただいく方もおられます。最近では南米の旅行者にサワー感のある仕上がりが人気」だそう。
「炭酸割りはもちろんですが、紅茶やハーブティーに加えたり、緑茶割りも以外と飲みやすく、料理の隠し味としても使える」とのこと。完成後の楽しみ方が広がることで、瓶の中の一週間がさらに待ち遠しくなります。
体験まとめ
梅酒や梅シロップは「買って飲むもの」でしたが、自分で仕込みをしてみると、素材への理解が深まり、味だけでなく文化や歴史、生産者の想いまで瓶に詰め込む体験になると感じました。梅にはクエン酸が含まれており、疲労回復効果も期待できるため、完成後に自宅で味わう時間は身体にも心にも嬉しいご褒美になります。また、インバウンド観光では「モノ消費からコト消費へ」と言われますが、蝶矢での体験は、旅先で自ら作ったものを持ち帰り、帰ったあとも楽しめるので、観光にぴったりの体験だと感じました。
さらに、契約農家に安定した収益をもたらし、後継者不足という課題解決への一歩にもなると伺いました。この一本には地域の農業を未来へつなぐ役割もあります。旅を記録する方法としても、地域を支える取り組みとしても、蝶矢のオリジナル梅体験はぜひ体験してみてはいかがですか。
店名 | 梅体験専門店 蝶矢 京都三条店 |
営業時間 | 10:00-19:00 |
住所 |
京都市中京区三条通河原町東入中島町87 |
アクセス |
京阪三条駅 徒歩5分 |
定休日 | 12/30-1/3 |
公式サイト |
https://choyaume.jp/pages/kyoto_sanjo |






