花山天文台 清水寺の裏山にある“宇宙への入口”
花山天文台

花山天文台 清水寺の裏山にある“宇宙への入口”

清水寺の裏に広がる東山にある花山天文台。
かつて「アマチュア天文学の聖地」とも呼ばれた花山天文台は、昭和初期の貴重な建物を目的に訪れる建築ファンも増えており、静かで落ち着いた空間や、晴れた日は遠くあべのハルカスまで見渡せる展望が人気の撮影スポットにもなっています。


 

ここでしか味わえない体験が集まる日

1929年の設立後、火星観測や太陽観測で世界的な成果をあげるなど、長い間、京都大学の天文台の主力観測施設でした。
 しかし、京都市の人口増加による観測環境の悪化で、1968年設立の飛騨天文台と2018年設立の岡山天文台に主力の座を譲り、今では高校生の見学や大学生の観測実習、土日の一般向け見学・教育など、社会連携の役割へと大きくシフトしました。

土日の公開は午前・午後の2部制で、自由見学コース、太陽スペクトル観望コース、4次元デジタル宇宙上映コースなどがあります。

太陽スペクトル観望コースでは、花山天文台の第九代台長だった柴田一成・京都大学名誉教授による講演と解説付き。天体現象をわかりやすく説明してくれるため、太陽や宇宙が身近に感じられるほか、天文台の歴史や裏話も聞けて、さまざまな角度で楽しめます。


柴田一成・京都大学名誉教授

昭和4年から動き続ける本館



建築家・大倉三郎氏が設計して建てられた歴史あるドームをもつ本館。観測ドームに入って見上げると、木と金属が組み合わさったレトロな雰囲気に包まれます。中央に構えるのは、国内3番目の大きさを誇る45cm屈折望遠鏡。1956年、ここで第三代台長・宮本博士が火星の偏東風を発見しました。

この望遠鏡は接眼部が高いためリフトに乗って観望します。また、望遠鏡の駆動は重りの重力を利用しており、現在でもこの方法を使っているのは世界的にも珍しいそうです。



世界的ロックバンド「クイーン」のギタリストで宇宙物理学者でもあるブライアン・メイさんが見学した際のサインと手形も見られます。

本館、別館、歴史館の三つの建物が、1929年、設計は三つとも大倉三郎氏です。


 

日本最古級の望遠鏡が今も動く別館



別館には、現役で稼働する望遠鏡として日本最古の「ザートリウス18cm屈折望遠鏡」があります。当初はハレー彗星観測が目的でしたが、現在は太陽フレアのHα観測で活躍しています。

建築ファンも魅了するレトロな歴史館


 


歴史館は本館同様、1929年に建てられた建物で、当時は子午儀と精密時計を用いた観測が行われていました。現在は天文台の歴史を辿る展示物が並んでいます。

この建物は一時取り壊しが検討されていましたが、工学部の先生が「絶対に残すべきだ」と訴え、保存が決まったという裏話があります。

太陽の“虹色の正体”を見られる太陽館


 


太陽館には、希少な70cmシーロスタット鏡が備えられており、分光器を通して太陽光のスペクトルが観察できます。太陽の光が虹のような縞模様となって現れ、その一つひとつに元素の情報が含まれていることを実際に見ると、科学がぐっと身近に感じられます。

また、この望遠鏡に使われている鏡は、鏡磨きの名人として知られる“レンズ和尚”こと木辺成麿和尚によるものだそうです。

花山天文台の未来

 
現在の花山天文台の重要な役割は、子どもたちが星や太陽を見て宇宙や自然に興味をもつきっかけをつくることですが、岡山天文台の開設により予算が縮小され、運営費が不足しています。

先日、設備維持のためのクラウドファンディングが行われ、見事に目標金額を達成。多くの支援者の思いが、この天文台の維持管理を支えています。





研究員の石井さんにお話をうかがいました。

「今、来訪者としては天文ファンが3割、建築ファンが3割、クイーンファンが3割くらいですが、ありがたいことに東京など遠方から来られる方も多く、“京都にこんな場所があったのか”と驚かれます。」

「現在は土日しか開いていませんが、目標は毎日開けれるようにして、京都の児童生徒や学校教員が一度は花山天文台を訪れることができ、まだ科学に興味のない子どもたちにも見学や実習で楽しんでもらいたいと考えています。」

「天文台といっても夜だけでなく昼も開いていますし、静かで見晴らしも良い場所です。観光スポットとしては少しマニアックかもしれませんが、観光地から意外と近いので、穴場のスポットとして楽しんでいただければ。」とのこと。


 


花山天文台は、昭和初期の建物と歴史ある望遠鏡が今も現役の“生きた科学遺産”。

天文好きの方はもちろん、建築に興味がある方、親子での学びを探している方、音楽好きの方まで、清水寺の裏側の“レトロな天文台”で、ちょっと変わった京都観光を楽しんでみてはいかがでしょうか。


名称 京都大学 大学院理学研究科附属天文台 花山天文台
住所 京都市山科区北花山大峰町17-1
アクセス JR京都駅から車・タクシーで20分。
※東山ドライブウェイ(市道渋谷蹴上線)は、二輪車通行禁止区間となっておりますので、決してオートバイ[原動機付自転車を含む]ではお越しにならないようお願い申し上げます。
HP https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp
土日見学 土日見学 申し込みページ
TEL 075-581-1235
search

ページ最上部へ戻る