東寺の見どころ
東寺について
新幹線の車窓からその姿を確認できる五重塔。京都を象徴するこの塔を擁する世界遺産・東寺(正式名称:教王護国寺)は、近鉄 東寺駅から徒歩10分、京都駅からでも歩いていける京都を代表する観光スポットのひとつです。真言宗の総本山で、平安遷都とともに建立されて以来、約1200年もの間、京都の人々に厚い信仰を集めてきました。
平安遷都当時、京の都には西寺と東寺以外の仏教寺院を建てることが許されておらず、823年、嵯峨天皇が弘法大師・空海に東寺を授け、東寺は真言密教の中心的な道場として発展。このとき名前を「教王護国寺」という名称に変更しました。
空海は東寺に講堂や五重塔、さらには「世界最古の大学」ともいわれる綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)を設立。また、空海が国家の安泰や世界平和を祈願して行った「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」は、王城を守る寺として朝廷からも深い信仰を集めました。
長い歴史のなかで、何度か火災や戦乱に見舞われましたが、そのたびに後白河法皇、足利高氏、豊臣秀頼、徳川家光といった歴代の権力者たちから支援を受け復興してきた東寺には、国宝や重要文化財に指定された数多くの貴重な寺宝が保管されています。
東寺の見どころ
南大門をくぐると正面に金堂、北に講堂、さらに奥には食堂(じきどう)が並び、左右には五重塔と灌頂院が配置された境内は、曼荼羅の世界をそのまま表しているといわれています。五重塔

東寺の象徴ともいえる五重塔は、有料拝観エリアの奥にそびえています。長い歴史の中で何度も火災に遭い、再建を重ねてきましたが、現在の塔は江戸時代初期に建てられたものです。基礎のお石壇から頂上の「相輪頂(そうりんちょう)」までの高さは約55メートルに達し、日本一高い五重塔として有名です。一段目の屋根の四隅には、屋根を支えるように彫刻された「邪鬼(じゃき)」の姿を見ることができます。
金堂

東寺のなかで最初に建てられた建物です。室町時代に火災で失われたのち、大阪の陣で活躍した豊臣秀頼によって関ヶ原の戦いの直後に建てられました。堂内には本尊の七仏薬師如来、右側に日光菩薩、左側には月光菩薩が安置されています。薬師如来台座には、如来を守り、如来の願いを成就する働きがある十二神将がぐるりと台座を囲っており、密教の教えを体現した「立体曼荼羅」と呼ばれる荘厳な空間がひろがります。
仏像のほかにも、秀吉が主催したお祭りを描いた屏風「豊国祭礼図屏風」など、貴重な美術品などが所蔵されています。
講堂

弘法大師・空海は、国立の寺院だった東寺を託され、人生のすべてをかけて密教の教えを広めようとしました。その中心的な建物として位置づけられたのが「講堂」です。東寺の境内の中心にあり、真言密教において非常に重要な役割を担う建物として知られています。
講堂には、大日如来をはじめとする五智如来像、五大菩薩坐像、五大明王像、梵天・帝釈天像、四天王像など、21体の仏像が安置されています。これらの仏像は、密教の教えを表現するために「立体曼荼羅(まんだら)」という配置に従って配置されており、すべてが国宝や重要文化財に指定された貴重なものです。
宝物館
長い歴史をもつ東寺は、寺宝を豊富に所有しており、その数はなんと総数23,000点。なかでも国宝に指定された寺宝は81点もあります。よりたくさんの寺宝に触れたい方は年に2回、春と秋に期間限定で開館される宝物館に行くとよいでしょう。宝物館では高さ6メートルほどもある千手観音菩薩などが特別公開されています。不二桜

東寺の境内でひときわ目を引くしだれ桜、それが「不二桜」です。もともとは盛岡市で育てられていましたが、2006年に東寺へと移植されました。盛岡、秋田、三重を転々とし、樹齢120年を迎えたこの桜は、弘法大師の「不二の教え」にちなみ「不二桜」と名付けられました。
その姿は高さ13メートル、枝張り10メートルにも及び、五重塔を背に立つその堂々たる姿はまさに圧巻です。五重塔の厳かな姿を背景に幻想的な景観を演出しています。まさに一見の価値がある風景です。
かわいいゆるみくじ
近年京都の神社仏閣で人気となっているのが「ゆるみくじ」と呼ばれるおみくじ。干支やその神社・寺院の象徴の生き物にちなんだかわいい置物と、その置物の中にあるおみくじを買うことができます。邪鬼みくじ
東寺にあるゆるみくじは、「邪鬼のおみくじ」。邪鬼とは、五重塔の初層屋根を支えていたり、四天王像に踏みつけられているあの鬼たちです。かわいらしいフォルムながらこちらを見つめてくる姿はまるで助けを求めているよう。すこし愛嬌を感じさせます。招き猫みくじ
東寺のゆるみくじは邪鬼ばかりではありません。さまざまなポーズと表情をみせてくれる「招き猫くじ」も人気です。なかにはウインクをしてくる猫ちゃんも。おみくじとともについてくる可愛らしい猫の置物は、つい全種類集めたくなってしまいます。東寺にはゆるみくじのほかにも、愛染明王にちなんだ「愛染さんからの一言おみくじ」、弘法大師キーホルダー、小さくかわいい達磨さまのお守り「だるま守り」など、お土産に選びたくなるようなかわいいお守り、おみくじ、アイテムを買い求めることができます。
東寺で体験する写経 ― 静寂の中で心を整える時間

東寺 南大門
写経体験 ― 四天王に見守られて
東寺の写経の会場は食堂(じきどう)の一角にあります。本尊は十一面観音菩薩。その左には四天王が並び、写経を行う人を護るかのように静かに佇んでいます。机の上には、薄く下書きされた般若心経の半紙。筆をとり、一文字ずつなぞっていくうちに、自然と心が落ち着いていきます。
心の変化に気づく瞬間
参拝や納経に訪れる人々の気配はありますが、集中するうちにその音は次第に気にならなくなり、ただ書に集中する時間が続きます。30分から1時間ほどで書き終えると、最後に自分の願いを一文添えて納めるとご祈祷をしていただけます。写経を終えて外に出たとき、心が整っていることにふと気づきます。般若心経の意味をもっと学びたい、そんな思いが自然と生まれてくる体験でもあります。
現在、東寺では2025年秋期特別公開(9月20日~11月25日)が開催中です。さらに毎月21日には「弘法市」が開かれ、多くの人が弘法大師の月命日に合わせて参拝します。骨董品や屋台が並ぶ賑わいも、東寺を訪れる楽しみのひとつです。

東寺 南大門から五重塔を望む

東寺 食堂

東寺 食堂 入口

写経場
寺院名 | 東寺(教王護国寺) |
拝観時間 | 8:00 〜 17:00(観智院・宝物館は9時から) |
住所 |
京都市南区九条町1 |
アクセス |
近鉄 東寺駅 徒歩10分、JR京都駅 徒歩15分 |
定休日 | 無休 |
電話番号 |
075-691-3325 |
拝観料 | 金堂・講堂:大人 500円、高校生 400円、中学生以下 300円(観智院、宝物館や特別拝観は別料金) |
公式サイト |
https://toji.or.jp |






