幽玄の美を味わう京の逸品。長久堂「花面」

京都市北区に店を構える「長久堂」は、1831年（天保2年）創業の老舗和菓子店です。京都御所の北、上賀茂のほど近くに位置する北山店では、四季折々の和菓子とともに、ゆったりとした時間が流れるサロン空間も楽しめます。

特に注目したいのは、長久堂ならではの伝統的な和菓子の数々。中でも干菓子「花面（はなおもて）」は、京の文化と美意識が凝縮された一品として、多くの観光客に愛されています。

「花面」は、能面を模して作られた干菓子です。名前のとおり、まるで花のような気品を宿しながら、能の世界に広がる幽玄美を映し出します。用いられているのは、能面師によって制作された精緻な木型。そこから生まれる表情は、翁（おきな）、乙羽御前（おとわごぜん）、小面（こおもて）、福の神、嘯吹（うそぶき）という5種の面に表現されています。

そのひとつひとつが、まるで物語を語るかのような佇まいを持ち、手に取った瞬間から見る者の心を引き込みます。優しさ、祝福、静けさといった感情が、和菓子というかたちに昇華されているのです。

上品な甘みと素材の個性

花面の魅力は、見た目の美しさだけではありません。味わいの面でも、京都らしい繊細さが光ります。使用されているのは、抹茶、空豆、大豆、玄米、和三盆など、自然の風味を生かした素材たち。それぞれの面に異なる素材が割り当てられ、ひとつひとつの味わいに個性が宿っています。

特に印象的なのが、香川県や徳島県で生産される高級砂糖「和三盆」を使用したタイプ。まろやかで控えめな甘さが口の中でふわっとほどけ、ほのかな余韻を残します。

干菓子ならではの軽やかな食感も相まって、緑茶や煎茶との相性は抜群。静かな午後のひとときに、心を落ち着ける甘味として寄り添ってくれます。

旅の思い出とともに、手土産にも最適

「花面」は、美しい化粧箱に詰められ、6個入り・10個入り・15個入りの展開があります。日持ちも約60日間と長めで、旅行のお土産や贈答品にもぴったりです。

特に、京文化に関心のある方や、芸術に触れることが好きな方へのプレゼントには喜ばれること間違いなし。視覚的な美しさと、和素材のやさしい味わいが揃っており、「見て楽しい、食べて嬉しい」和菓子といえます。

京都の風雅を、自宅でも

長久堂の「花面」は、京都駅の土産物コーナーでも購入できますが、ぜひ北山の店舗にも足を運んでみてください。和菓子に囲まれた空間で味わうお茶の時間は、旅の疲れを癒してくれるだけでなく、京都の空気感そのものを体験させてくれます。

能楽の美と、京菓子の匠の技が出会って生まれた逸品「花面」。それは、伝統と静寂を味わうひとときにぴったりの京都土産です。