学び知っておきたい京言葉10選!京都をより楽しもう

知っておきたい京言葉10選!京都をより楽しもう

日本を代表する都市のひとつ、京都。趣のある街並みとは国内外問わず人気があります。観光中は美しい建物に目移りしてしまいますが、聞こえてくる会話に耳を傾けるとより京都の雰囲気を楽しめるでしょう。

この記事では京言葉の由来や特徴、よく使われる言葉の意味をご紹介します。

 

京言葉とは

京言葉は、実は江戸時代中旬頃までは標準語とされていた言葉です。長く日本の中枢として長く栄えてきた京都の歴史が反映されています。京言葉には「御所ことば」と「町方ことば」の2つが存在し、混ざりあいながら現在の言葉へと変化してきました。

 

御所ことば

皇室や御所に遣える女官が使っていた丁寧な言葉遣いで、頭に「お」をつけたり、語尾に「もじ」をつける特徴があり、生活に関する言葉が多く含まれています。「おつくり」「おかか」「おこわ」など、現在でも使われているこれらの言葉は御所ことばからきています。

 

町方ことば

町方ことばは、職業や地域によって5種類に分かれており、日常会話で使われる京言葉の大部分を占めています。

代表的なものには、室町通の問屋街・商家で話されていた「中京ことば」、舞妓さんが使う「花街ことば」があります。

 

 

京言葉の特徴

 

言葉づかい

京言葉の特徴的な点として、助詞を省略して母音を伸ばす表現が挙げられます。標準語でも「買い物(に)行ってくれる?」のように助詞が省かれることがありますが京都では「買い物ぉ頼まれてくれへん?」のように小さな母音が挟まることが多いです。

また、この例文のように京言葉の語尾には独特の柔らかさがあります。「~はる」という表現も有名ですね。慌ただしさを感じさせない優雅な印象を与えてくれます。

 

遠回しな表現

京都では相手を傷つけないように、はっきりと物事を言わない言葉遣いが好まれます。代々続く家が多いので、その土地での付き合いを保つための処世術でもありました。

たとえば、話し込んでしまったときに「良い時計してますなぁ」と言われたら、解散の合図と言われています。相手に恥をかかせず時間に気付かせるテクニックのひとつです。互いを思いやる気持ちがあってこそ成り立つ表現方法ですね。

 

京都で使われている京言葉

おいでやす

意味:いらっしゃいませ

お店を訪れるとかけられる言葉で、定番の挨拶です。

より丁寧な表現に「おこしやす」という言葉もあります。こちらは予約した旅館やレストランなどで使われ「お越しいただきありがとうございます」という意味が含まれています。

 

おおきに

意味:ありがとう

「大いに有難し」という感謝の表現が「おおきに、ありがとう」と変化し、今では「おおきに」だけで感謝の気持ちが伝わるようになり、遠回しに誘いを断るときにも使われています。標準語だと「(誘ってくれて)ありがとう、考えとくね」という言い方に近いでしょう。

 

あがる・さがる

意味:北へ行く・南へ行く

京都の街は「碁盤の目」と表現されるように、直線の道が交差して格子状に造られています。北側には京都御所があったため、北へは「上(あが)る」、南へは「下(さが)る」と言われるようになりました。住所にも「◯◯通△△上る」と表記されているのはこのためです。

ちなみに東へ行くことは「東入る(ひがしいる)」、西へ行くことは「西入る(にしいる)」と言われます。

 

おきばりやす

意味:頑張ってください

「気張る」という言葉が語源で、意気込む意味を持ちます。女将さんが舞妓さんを送り出すときに「精を出して頑張って」という意味を込めて使われていました。

 

はんなり

意味:晴れやかな、上品で明るい

人柄や味をやわらかく伝える言葉のイメージがありますが、実は「華なり」が語源の言葉であり、もともとは鮮やかな色合いに対して使われていました。パステルカラーを表現しそうな語感とは違い、少し意外に感じるかもしれませんね。

 

おはようおかえり

意味:いってらっしゃい

漢字で書くと「お早うお帰り」となるため「早く帰ってきてね」という意味になります。学校や会社へ行くときの見送りで、無事に帰ってきてほしい気持ちを込めて使われます。

 

いけず

意味:意地悪

仲のいい人から悪ふざけをされたとき、嫌味を含まずに返せる言葉です。「いけずしはるなぁ」と言われるとノリに付き合ってくれたように感じますが、時には非難の意味を込めて使われることもありますので、冗談はほどほどにしましょうね。

由来は当たり前にはいかないという意味の「いかず」、手に負えない人を指す「不成者(いけずもの)」など、所説あるようです。

 

えらい

意味:たくさんの、大変な

京都では「偉い」ではなく、程度が大きくかけ離れた意味をもつ「豪(えら)い」として「えらい◯◯やなぁ」などと使われます。標準語にすると「とても」のような意味ですね。

 

はばかりさん

意味:ご苦労さん

お世話になったときや少し頼みごとをするときの「憚(はばか)り様」が語源で、「おおきに、はばかりさん」と組み合わせることでより感謝の気持ちも含まれます。

 

ほっこり

意味:ほっとする、(気持ち的に)疲れた

心が温まるような気持ちを表しているのではなく、実は「間に合ってほっこりした」というような使い方をされます。温かさを表す「ほこほこ」から生まれた言葉で、「安心」と「疲労・退屈」の意味を持ち、後者が京都での使い方として定着しました。

 

【番外】京言葉の建前と本音

 

ぶぶ漬け

京都では人を家に招くときはきちんと食事を用意するのが礼儀とされていました。しかし、その準備が整っていないと失礼にあたるので、「ぶぶ漬け(お茶漬け)を食べませんか?」という問いかけは、遠回しにもてなしができないお詫びを伝える方法だったのです。

そして、相手もその意味に気付いて「また今度」と断りを入れ、家を後にする。お互いを配慮しあう心遣いのひとつで、オブラートに包まれた優しいやり取りでした。

「ぶぶ漬けでもどうどす?」と言われたら、「早く帰ってほしい」という意味だと解釈されることが多いですが、実際にはこの言葉が京都で使われることはあまりありません。現在では嫌味としてではなく、むしろ好意的に捉えられることが一般的です。夕食のシメや夜食としてもよく食べられるので、必要以上に警戒せず、いただくのも良いかもしれませんね。

このように、歴史と思いやりの気持ちから生まれた京言葉は独自の意味を持って変化してきました。

日常会話で使われる機会は減っていますが、歴史のある老舗店では耳にするチャンスかもしれません。観光に行く際はぜひ美しい京言葉も楽しんでください。