野村美術館 2025年秋季特別展「野村得庵 近代数寄者たちとの交遊」―野村得庵と近代数寄者たちの絆をたどる―
京都・南禅寺近くの野村美術館では、2025年秋季特別展「野村得庵 近代数寄者たちとの交遊」が開催されます。明治維新によって急速に変わりゆく社会の中で、日本の伝統文化である茶の湯を守り、次の時代へとつなげようとした人々がいました。
その中心にいたのが、野村美術館の創設者・野村得庵(本名 二代目野村徳七)です。
実業家でありながら、茶の湯をはじめとする芸術文化の保存と発展に尽くした得庵と、彼を取り巻く近代数寄者たちの交流を、貴重な資料と名品からたどります。
益田鈍翁、高橋箒庵、高谷宗範、大谷尊由、住友春翠――いずれも財界や文化界の重鎮でありながら、茶の湯を通じて心を通わせた仲間でした。彼らは旧家の売立で出た名品を守り、茶会を催し、文化を支え合いました。得庵はその輪の中で、流派や地位を超えて交流を深めていきます。
今回の展示では、そうした交遊を裏づける七つの茶会記録が紹介され、近代文化を支えた人々の人間ドラマが浮かび上がります。
金銭を超えた信義と友情が、二人の間に通っていたことを感じさせます。

沢庵宗彭筆 夢語(後期展示)
ほかにも、「種村肩衝茶入」をめぐる逸話が見どころの一つ。譲り受けを望んだ得庵と畠山即翁との間で粘り強いやり取りが重ねられ、最終的に得庵の真摯な思いが伝わり譲り受けが叶ったといいます。
戦時中のため披露茶会は実現しなかったものの、茶を愛する者同士の熱い心が伝わる逸話です。

種村肩衝茶入(後期展示)
また、今回の展示では、得庵が生涯大切にした名品「三作三島(土井三島)」も全期間を通して展示されます。桃山時代の名陶として知られる三島茶碗は、得庵の美意識を象徴する一碗。
静かな佇まいの中に、茶人としての感性と審美眼が息づいています。

土井三島茶碗(通期展示)
これらの作品からは、単なる美術品の価値を超え、茶の湯を介して人と人が結びついていた時代の空気が伝わってきます。得庵のまなざしに映っていたのは、品格と友情、そして“数寄の心”そのものでした。
得庵はその志を敬い、宗範の三回忌追善茶会で薄茶席を担当。掛け軸には沢庵宗彭の「夢語」を掲げ、亡き師を偲びました。
宗範の設計による松殿山荘は、庭園と建物が一体となった美の結晶であり、現在は国の重要文化財に指定されています。得庵の茶の湯もまた、このような「美と心の交わり」を何より大切にしていたことがうかがえます。
前期・後期で展示替えが行われ、「高橋箒庵共筒茶杓 銘芦葉」や「沢庵宗彭筆 夢語」など、時期ごとに異なる名品に出会えるのも楽しみのひとつです。
歴史の一頁に刻まれた数寄者たちの友情と美意識。その静かな熱を、京都・南禅寺の秋風の中で感じてみてはいかがでしょうか。
その中心にいたのが、野村美術館の創設者・野村得庵(本名 二代目野村徳七)です。
実業家でありながら、茶の湯をはじめとする芸術文化の保存と発展に尽くした得庵と、彼を取り巻く近代数寄者たちの交流を、貴重な資料と名品からたどります。
茶の湯が結んだ友情 ― 得庵と近代数寄者たち
明治維新ののち、かつての大名文化が衰え、茶の湯も危機に直面していました。そんな時代に、伝統を未来へつなごうと動いたのが近代数寄者たちです。益田鈍翁、高橋箒庵、高谷宗範、大谷尊由、住友春翠――いずれも財界や文化界の重鎮でありながら、茶の湯を通じて心を通わせた仲間でした。彼らは旧家の売立で出た名品を守り、茶会を催し、文化を支え合いました。得庵はその輪の中で、流派や地位を超えて交流を深めていきます。
今回の展示では、そうした交遊を裏づける七つの茶会記録が紹介され、近代文化を支えた人々の人間ドラマが浮かび上がります。
逸話が語る数寄の心 ― 名品と人の物語
展示の中でも注目を集めるのが、「沢庵宗彭筆 夢語二字」。大正8年の入札で、得庵が亡き弟の追善茶会にぜひ使いたいと願った書でした。競り落としたのは住友春翠でしたが、事情を知った春翠は書を譲り、得庵は深く感謝の礼状を送ったと伝わります。金銭を超えた信義と友情が、二人の間に通っていたことを感じさせます。

沢庵宗彭筆 夢語(後期展示)
ほかにも、「種村肩衝茶入」をめぐる逸話が見どころの一つ。譲り受けを望んだ得庵と畠山即翁との間で粘り強いやり取りが重ねられ、最終的に得庵の真摯な思いが伝わり譲り受けが叶ったといいます。
戦時中のため披露茶会は実現しなかったものの、茶を愛する者同士の熱い心が伝わる逸話です。

種村肩衝茶入(後期展示)
また、今回の展示では、得庵が生涯大切にした名品「三作三島(土井三島)」も全期間を通して展示されます。桃山時代の名陶として知られる三島茶碗は、得庵の美意識を象徴する一碗。
静かな佇まいの中に、茶人としての感性と審美眼が息づいています。

土井三島茶碗(通期展示)
これらの作品からは、単なる美術品の価値を超え、茶の湯を介して人と人が結びついていた時代の空気が伝わってきます。得庵のまなざしに映っていたのは、品格と友情、そして“数寄の心”そのものでした。
茶会に息づく敬慕と創造 ― 高谷宗範との交わり
もう一つ忘れてはならないのが、高谷宗範との深い親交です。宗範は「方円」の思想を重んじ、「心は円く、行いは正しく」という信条のもと松殿山荘を築きました。得庵はその志を敬い、宗範の三回忌追善茶会で薄茶席を担当。掛け軸には沢庵宗彭の「夢語」を掲げ、亡き師を偲びました。
宗範の設計による松殿山荘は、庭園と建物が一体となった美の結晶であり、現在は国の重要文化財に指定されています。得庵の茶の湯もまた、このような「美と心の交わり」を何より大切にしていたことがうかがえます。
文化の息づく京都・南禅寺の麓で
野村美術館があるのは、南禅寺の参道近く。四季折々の自然が美しく、茶の湯文化が息づく地です。本展では、得庵が近代数寄者たちと共に見つめた「日本の美」の原点に触れることができます。前期・後期で展示替えが行われ、「高橋箒庵共筒茶杓 銘芦葉」や「沢庵宗彭筆 夢語」など、時期ごとに異なる名品に出会えるのも楽しみのひとつです。
歴史の一頁に刻まれた数寄者たちの友情と美意識。その静かな熱を、京都・南禅寺の秋風の中で感じてみてはいかがでしょうか。
展覧会名 |
2025年秋季特別展「野村得庵 近代数寄者たちとの交遊」 |
会期 |
前期:9月6日(土)~10月19日(日) 後期:10月25日(土)~12月7日(日) ※ 10月20日(月)~24日(金)は展示替のため休館 |
館名 | 野村美術館 |
開館時間 | 10:00-16:30(16:00最終入館) |
住所 |
京都市左京区南禅寺下河原町61 |
アクセス |
市バス「南禅寺・永観堂道」から徒歩約5分 |
休館日 | 月曜日 (月曜が祝日の場合は翌日) |
電話番号 |
075-751-0374 |
入場料 | 一般1000円/学生(高校生以上)800円/中学生以下無料 |
公式サイト |
https://nomura-museum.or.jp/publics/index/16/#block84 |






