お土産甘泉堂の「とりどり最中」で味わう四季の情景

甘泉堂の「とりどり最中」で味わう四季の情景

京都・祇園の街並みを歩くと、どこからともなく漂う甘い香りがします。その中で歴史を感じさせるのが、1884年創業の老舗 「甘泉堂(かんせんどう)」。

6代目が受け継ぐこの店は、昔ながらの製法を守りつつ、新しい時代にも寄り添う和菓子を届け続けています。今回は、そんな甘泉堂の名物 「とりどり最中」 をご紹介します。戦時中から続く「指定銘柄品」という由緒正しいお菓子で、一枚で四つの味が楽しめるというユニークさが魅力です。

 

 

甘泉堂は、京都・祇園の花街のそばで商いを続け、明治から昭和にかけて多くの文化人や芸舞妓にも親しまれてきました。その看板商品の一つが、 「とりどり最中」 です。これは1942年、戦時中の砂糖不足で多くの菓子製造が制限される中、伝統を守るべき価値ある商品として特別に製造が許可されたもの。現在も、当時と同じ原材料と手法で作り続けられています。

 

直径14cmほどの円形の最中を十字に仕切り、それぞれ異なる餡を詰めています。餡には寒天を加えることで適度な弾力があり噛むたびにぷるっとした食感がありながら、素材本来の風味をしっかりと感じられるのが魅力です。

 

とりどり最中 600円 

 

 

餡は、春・夏・秋・冬という四季を表現しています。春の餡は小豆本来の豊かな風味と粒感を楽しめる大納言粒餡。夏は涼しげで、爽やかな香りの柚子風味のこし餡。秋には滑らかな舌触りが魅力の小豆のこし餡。そして冬は北海道産「斗六(とろく)」という白いんげん豆を使った粒餡で、ほんのりやわらかな甘さを味わえます。

 

これら四つの餡を一度に味わうことで、一年を通してお菓子を楽しんでいるような贅沢感が味わえるのが「とりどり最中」の醍醐味。噛むたびに違う味や食感が楽しめます。

外側の「最中種」は、注文を受けてから餡を詰めるため、最中種が湿気を吸う時間をできるだけ短くし、買ったときのパリッとした歯応えを保てるよう配慮されているのが嬉しいポイント。

 

4種類の餡が詰まった最中は、一枚を丸ごとかじるのもよし、ナイフで4等分にして一種類ずつ味わうのもおすすめです。春の大納言粒餡から始めて、柚子の風味が楽しめる夏のこし餡へ。次に秋のこし餡で優しい甘さを感じ、最後は冬の白いんげん豆で締めると、まるで一年を旅しているような気分になれます。

日持ちはそれほど長くはありませんが、万が一少し湿気が入ってしまった場合は、オーブントースターで軽く炙るのもひとつの手。最中種が香ばしくなり、餡の風味も立ち上がるので、また違った味わいが楽しめます。

甘泉堂の「とりどり最中」は、昔ながらの製法と厳選した素材によって生み出される、京都らしい和菓子です。一枚の中に詰まった春夏秋冬の餡が、それぞれ違った風味を持ちながらも、バランスよく調和しています。噛むたびに広がる香りと優しい甘さは、忙しい旅の合間にほっとする時間を与えてくれます。

 

 

店名 甘泉堂
営業時間 10:30 – 19:00
住所 京都市東山区祇園町344-6
アクセス 京阪 祇園四条駅から 徒歩約5分
定休日 日曜日
電話番号 075-561-2133
公式サイト