ビジネスに適した手紙の書き方とは?例文と基本マナーを解説
ビジネスシーンでは、メールが主流になった現代においても、取引先や顧客に対して手紙を送る機会があります。
手紙には基本の形式やマナーがあり、ビジネスでは相手や目的に合わせて正しく手紙を書くことが求められます。
ビジネスマナーの1つとして、基本的な手紙の書き方を身につけることが大切です。
目次
ビジネスで送る手紙の基本構成
手紙は、前文、主文、末文、後付で構成されます。
ビジネスでの手紙やメールでは、結論を簡潔に伝えることが求められる一方、本題の前後に相手への気遣いや季節の言葉を添えて、コミュニケーションの深化を図ることも重要です。
1.前文:本題に入る前の挨拶
手紙の前文には、頭語や時候の挨拶、相手の近況を伺う言葉などを書きます。
頭語とは、「拝啓」「謹啓」「前略」などの手紙で用いられる形式的な言葉です。
ビジネスでは、「拝啓」または拝啓よりも丁寧な「謹啓」を使うのが一般的です。
頭語から一文字分空けて、時候の挨拶を入れます。
時候の挨拶は月ごとに異なるため、手紙を送る時期に合わせて、季節感のある挨拶を選びましょう。
頭語、時候の挨拶に続き、日頃お世話になっていることへの感謝を述べます。
ビジネスメールでよく使われる「いつも大変お世話になっております」にあたる部分で、手紙では「平素は格別のご高配を賜り、心より感謝申し上げます」などと書きます。
前文は本題に入る前の挨拶や前置きにあたるため、長くなりすぎないように気をつけましょう。
頭語、時候の挨拶のみにとどめ、主文に入ることもあります。
お詫びの手紙では時候の挨拶を省略し、頭語と日頃お世話になっていることへの感謝の言葉のみを書き、すぐにお詫びの言葉を述べます。
2.主文:手紙の用件
主文とは、手紙の本題のことです。前文から一行を空けて、起語(書き起こし言葉)から書き始めます。
起語には、「さて」「このたびは」「早速ではございますが」「〇〇の件につきまして」などがあります。
主文の1行目を読んだだけで、相手に手紙の目的が伝わるように書きましょう。
例えばお礼の手紙の場合、「このたびは、ご丁寧にお歳暮の品を賜り、誠にありがとうございました」と書きます。このように書くと、お礼の手紙であることと、何に対するお礼であるのかが一目でわかります。
3.末文:結びの挨拶
末文には、相手の健康や繁栄、良好な関係を願う言葉と「結語」を入れます。
結語とは、頭語と対になった結びの言葉です。拝啓→敬具、謹啓→謹白、前略→草々を使い、文末に入れます。
相手の健康や良好な関係を願う例文は、次の通りです。
- 猛暑厳しき折、くれぐれもご自愛のほどお願い申し上げます
- 時節柄お忙しいかと存じますが、ご自愛くださいませ
- 今後も変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます
- 引き続きよろしくお願い申し上げます
- 貴社のご健勝をお祈り申し上げます
お礼やお詫びの手紙の場合、末文でも感謝や謝罪の言葉を入れると、より気持ちが伝わるでしょう。
- ご厚情を賜り、誠にありがとうございます
- この度の件につきまして、謹んでお詫び申し上げます
- 略儀ながら書中をもって御礼申し上げます
- 略儀ながらまずは書中にてお詫び申し上げます
4.後付:差出人と宛名
後付には、日付、差出人、宛名を書きます。日付、差出人、宛名を入れる順番と書く場所に注意しましょう。
取引先に送る場合、差出人には会社名、部署名、名前を書き、宛名には会社名、部署名、肩書、名前、敬称を入れます。
宛名は、差出人よりもやや大きく書くのがマナーです。
よくあるビジネスシーン別!手紙の例文
ビジネスでは、お礼、お詫び、お知らせ、挨拶を目的に手紙を送ることがあります。
例文を参考にして季節に合わせた時候の挨拶を入れれば、基本的な手紙が完成します。
手紙を書くことに慣れていない方は、まずは例文を参考にして書いてみましょう。
お礼の手紙
お礼の言葉とともに、個人的な感想を加えるとオリジナリティーのある手紙になります。
①前文
謹啓 師走の候 貴社におかれましては益々ご清祥のことと存じます。
平素は格別のご高配を賜り、心より感謝申し上げます。
②主文
このたびは、弊社の新サービスの立ち上げに多大なるご協力をいただきまして、
誠にありがとうございました。
おかげさまで、▲月▲日よりサービスを開始することとなりました。
〇〇様には何度も弊社にご足労いただき、長年培われた技術でお力添えいただきました。
私自身、大変勉強になりました。深く感謝申し上げます。
③末文
今後ともご協力を賜りますようお願い申し上げます。
時節柄お忙しいかと存じますが、ご自愛くださいませ。 謹白
お詫びの手紙
お詫びの手紙には、謝罪とともに問題が発生した原因や今後の対応も書くのが基本です。
原因や対応策がまだわからない場合は、早急に対応することを伝え、誠意を示します。
①前文
謹啓
平素は格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。
②主文
このたびは、貴社よりご依頼いただきました〇〇の発送が遅れまして、大変申し訳ございません。
貴社に多大なご迷惑をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。
原因は受注システムの不具合によるもので、貴社よりいただきましたご注文を正しく受注できておりませんでした。
すでに不具合は解消し、発送準備に取り掛かっております。
商品は〇月〇日までにお届けできる予定でございます。
到着まで今しばらくお待ちくださいますようお願い申し上げます。
③末文
このたびはご迷惑をおかけいたしましたことを、重ねてお詫び申し上げます。
書面をもちまして納期遅延のお詫びを申し上げます。 謹白
休業を知らせる手紙
夏季休暇や年末年始休暇を伝える手紙には、暑さや寒さによる体調変化を気遣う言葉を入れるとよいでしょう。休暇により相手に迷惑をかける場合は、お詫びの言葉も添えます。
①前文
謹啓 酷暑の候 貴社におかれましては益々ご清祥のことと存じます。
平素より大変お世話になっております。
②主文
誠に勝手ながら、弊社では下記の日程で休業とさせていただきます。
〇月〇日(〇)~〇月〇日(〇)
休業前の最終受注日は、〇月〇日(〇)でございます。
夏季休業中は多大なご不便・ご迷惑をおかけするかと存じますが、何卒ご理解・ご協力いただきますようよろしくお願い申し上げます。
③末文
猛暑厳しき折、くれぐれもご自愛くださいませ。 謹白
担当者への挨拶の手紙
初めて取引をする際や前任者から担当を受け継いだ際、後任者に受け継ぐ際などに、挨拶の手紙を送ることがあります。良好な関係を築けるよう、より丁寧に手紙を書きましょう。
①前文
謹啓 春暖の候 ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
②主文
このたび、貴社の担当をさせていただくことになりました〇〇〇と申します。
先日は前任の△△△とともにご挨拶をさせていただきまして、ありがとうございました。
新システム導入のタイミングで担当者が交代することとなりましたが、ご不便をおかけしないよう、誠心誠意努めてまいります。
③末文
引き続き変わらぬお引き立てのほどお願い申し上げます。 謹白
ビジネスで手紙を送る際の基本マナー
手紙の書き方以外にも、気をつけたいポイントがあります。
どんなに丁寧に手紙を書いたとしても、ビジネスにふさわしくない便箋を使っていたり、宛名が間違っていたりしたら、信頼を損ねるかもしれません。
ビジネスの手紙は縦書きの便箋と封筒を選ぶ
ビジネスの手紙では、ハガキではなく便箋と封筒を使うのが一般的です。暑中見舞いや年賀状はハガキでも問題ありません。
便箋と封筒は、白色で縦書きのものを選びます。ただし、数字やアルファベット、片仮名を多く使う場合やパーティーの招待状などを送る際は、横書きでも失礼にはなりません。
ビジネスでは柄が入っていない無地の便箋と封筒を選ぶのが基本ですが、手紙の内容や相手との関係性に応じて、柄が入ったものを選んでもよいでしょう。
ただし、お礼やお詫びなどのフォーマルな手紙では、無地で白色のものを使い縦書きで書くのが基本です。
宛名と住所を正しく書く
封筒には、相手の住所、会社名、部署名、肩書、名前を正しく書きます。部署名や肩書は省略せず、正式名を書きましょう。
封筒の書き方には、次のルールがあります。
- 縦書きの場合、数字は漢数字にする
- 会社名は、住所より一文字程度下げて書き始める
- 会社名と部署名の間は、一文字分空ける
- 楷書名と部署名が長い場合、改行して書く
- 肩書の下に一文字分空けて、相手の名前を書く
- 肩書が5文字以上の場合、改行して名前を書く
- 名前は住所や会社名、部署名よりも大きく書く
封筒は、相手が最初に目にするものです。宛名が間違っていたり、書き方のルールが守られていなかったりすると、相手は不信感を持つかもしれません。封筒の書き方も把握しておきましょう。
手紙を出すタイミングを考える
お礼やお詫びの手紙は、なるべく早く出すのがマナーです。
本来は直接会って感謝やお詫びを伝えるのが基本ですが、会うのが難しい時や後日会う場合は、先に手紙やメールを送ります。
お詫びをする場合、直接会ってお詫びをした後に手紙を送り、改めて謝罪の意を示すこともあります。
ビジネスでのお礼やお詫びの手紙は、会社全体の印象に関わります。手紙を送る前に上司や先輩に内容を確認してもらいましょう。
季節の挨拶状を送る時期にも注意が必要です。
暑中見舞いは、7月中旬頃から立秋の8月7日頃までに送り、立秋を過ぎた場合は8月末頃までに残暑見舞いを送ります。
ビジネスに適した手紙の書き方を覚えよう
手紙には基本的なルールがあり、ビジネスの手紙ではルールやマナーを守ることが求められます。
どんなに気持ちを込めて丁寧に手紙を書いたとしても、マナーが守られていなければ、相手に「失礼な人だ」「仕事を任せられない」と思われるかもしれません。
手紙の構成から時候の挨拶、封筒の書き方まで、基本的なルールをおさらいしておきましょう。
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