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コンピテンシーとは

コンピテンシーの定義と基本知識

コンピテンシーとは、個人が業務を遂行する上で必要とされる知識、技術、能力、そして行動特性の総称を指します。単なるスキルだけでなく、仕事を効果的に行うために必要な価値観や態度も含まれます。

 

ハイパフォーマーに共通した行動特性

コンピテンシーは、職務や業務で高い成果を出す人々、いわゆるハイパフォーマーが持つ共通の特性を体系化したものです。これには、問題解決能力、コミュニケーション能力、リーダーシップ、チームワーク、時間管理など、さまざまな要素が含まれます。これらの要素を明確にすることで、組織は人材育成や評価、採用などの人事戦略をより効果的に実施できるようになります。

 

コンピテンシーが誕生した背景

コンピテンシーの概念は、1970年代にマネジメント理論として登場しました(米ハーバード大学)。当時、企業は従業員のスキルのみを重視していましたが、仕事の成果には個人の行動や態度も大きく影響することが認識されるようになってきました。従業員の行動特性や態度も評価し、育成することの重要性が高まり、コンピテンシーという概念が誕生したのです。

また、グローバル化により、異なる文化を持つ人々が協力して働く環境が増え、コミュニケーション能力や多様性を尊重する考えが重要視されるようになったという背景があります。

このようにコンピテンシーは、現代のビジネス環境においてさらに重要性を増しており、その理解と活用はすべての組織にとって重要になっています。

 

コンピテンシーとスキルの違い

スキルは、プログラミングや英会話などの具体的な技術や能力を指します。コンピテンシーは、技術や能力をもとにしたコミュニケーション能力や問題解決能力などの行動特性も含めて総合的に指す概念です。

 

コンピテンシーとアビリティの違い

アビリティは、個人が生まれながらにして持っている才能、または経験を通じて獲得した適性能力を指します。コンピテンシーはアビリティを基にして培われます。

 

コンピテンシーとコア・コンピタンスの違い

コア・コンピタンスは、企業が持つ独自の強みや専門知識のことで、個人の能力を示すコンピテンシーとは対象とする範囲が異なります。

 

コンピテンシーのメリットとデメリット

コンピテンシーを理解することは、マネジメントや組織運営に不可欠であり、人材の育成・評価に大きなメリットがありますが、デメリットもあるため、対処方法を把握しておくことが重要です。

 

コンピテンシーのメリット

1.人材育成がしやすい

評価基準とするコンピテンシーを明確にすることで、必要なスキルや行動が具体化されるため、従業員は基準を明確に理解し、目標達成に向けた方向性を定めやすくなります。また、教育や研修の内容も、コンピテンシーにもとづいて計画することで、より効果的な人材育成ができます。

 

2.評価が公平で納得感がある

コンピテンシー評価は、客観的な基準に基づく公平な評価ができるので、従業員のモチベーション向上や職場の満足度が高まることが期待できます。

 

3.組織の目標達成に貢献

コンピテンシー評価を明確にすることで、組織全体が同じ方向を向いて行動することができるため、組織の目標達成に向けた戦略を立てやすくなります。

 

コンピテンシーのデメリットと対処方法

コンピテンシー評価の導入には、評価モデルの開発、評価プロセスの検討、評価体制の管理などを構築するための時間や労力がかかります。また、評価モデルが時代遅れにならないよう定期的な見直しも必要です。

このような課題に対処するためには、まず設計段階で、現場の声を積極的に取り入れ、実際の業務に即した評価モデルを作成することが重要です。さらに、導入後は定期的に適性を評価し、必要に応じて更新することが求められます。また、評価の効率化を図るために、ITシステムの活用などによる自動化も有効な手段となります。

コンピテンシー評価の導入にあたっては、これらのデメリットに対処するための計画を事前に検討することが重要です。

 

コンピテンシー評価のモデル設定

実在型、理想型、ハイブリッド型モデル

コンピテンシー評価のモデルには大きく分けて三つのタイプがあります。

 

1.実在型モデル

従業員が持つコンピテンシーを分析し、そのデータに基づいて構築するタイプ。既存の成功事例を基にするため業務遂行能力を明確にするのに有効。

 

2.理想型モデル

組織の将来的な目標や理想とする姿を反映するタイプ。未来志向であり、組織が目指すべき方向性を示すために用いる。

 

3.ハイブリッド型モデル

実在型と理想型の要素を組み合わせるタイプ。現状の業務遂行能力と将来的な目標の両方を考慮し、よりバランスの取れたアプローチで評価モデルを構築する。

 

評価モデルを設定するポイント

1.組織の目標との整合性

組織のビジョンや戦略と密接に連携している必要があります。

 

2.実務との連携

業務分析を行い、実際の業務内容や職務要件を反映したものでなければなりません。

 

3.柔軟性と進化

市場や組織の変化に伴い、定期的な見直しを行い、変化する環境に適応させる柔軟性が求められます。

 

4.従業員の理解

ワークショップや研修を通じて従業員が内容を理解し、受け入れることが不可欠です

 

5.明確な評価基準

評価モデルを人事評価や人材育成の基盤として活用するための基準を明確に設定する必要があります。

 

コンピテンシーの実務での活用シーン

コンピテンシーは、職場における様々なシーンで有効活用できます。ここでは、人事、採用、組織マネジメントの各シーンにおける活用方法を解説します。

 

従業員の人事評価における活用

  • 基準にもとづいて評価を行うことで公平性と透明性が保証される。
  • 従業員が目標達成に向けた具体的な行動を取りやすくなるため、パフォーマンスが上がる。
  • コンピテンシーに基づいたフィードバックにより、スキルアップとキャリア開発が促進される。

 

採用・面接における活用

  • 職種ごとに候補者の適性を評価できる。
  • 同一の基準で評価できるため、一貫性と公平性を保てる。
  • 現在のスキルだけでなく、将来的なポテンシャルも評価できる。

 

組織マネジメントでの活用

  • 組織全体の目標達成に必要な行動やスキルを特定し、戦略を立てられる。
  • 共通の価値観や行動基準を定義することで、組織文化の構築と強化が促進される。
  • コンピテンシーに基づいたチーム編成を行うことで、チームのパフォーマンスがあがる。

 

コンピテンシー評価の導入手順

コンピテンシー評価の導入は、企業が従業員の能力を正確に評価し、その結果を人事戦略に活かすために極めて重要なプロセスです。

 

ヒアリングとコンピテンシーモデルの設定

最初のステップは、組織の目標と現在の課題を理解するためのヒアリングから始まります。経営層や部門責任者、現場の従業員から、組織が直面している問題や将来の目標について幅広く情報を集めます。集められた情報を基に、最も適したコンピテンシーモデルを設定します。

 

評価項目の作成とレベル設定

各コンピテンシーをどのように測定し、評価するかを定めます。例えば、リーダーシップ、コミュニケーション能力、問題解決能力など、具体的な行動指標とそれに対応するレベルを設定します。

評価項目の設定には、行動主義心理学に基づいたSTAR法(Situation/Task, Action, Result)が有効です。この方法では、特定の状況(S/T)でのタスク、それに対する行動(A)、及びその結果(R)を明確に定義し、評価します。これにより、従業員の行動と成果を具体的かつ客観的に測定することが可能になります。

コンピテンシー評価の導入を通じて、従業員の潜在能力を最大限に引き出し、組織の目標達成に貢献する人材を育成することができます。

 

コンピテンシー導入の際の注意点

モデルが常に適切ではないこと

組織の文化、目指すべき方向性、業務の性質によって、最適なモデルは異なるので、組織に合わせたモデルにすることが成功の鍵となります。

たとえば、公共機関では、規則遵守や責任感が重視されることが多いのに対し、スタートアップ企業では、革新性やスピード感がより重要視されるなど、大きな違いがあります。

 

表面的な行動だけでは意味がないこと

表面的な行動や成果だけを評価するのではなく、思考プロセスや価値観を理解し、評価することが重要です。これは、成果を出すために従業員がどのように問題に取り組み、どのような判断を下したかを重視することを意味します。

たとえば、あるプロジェクトが成功した場合、背後にあるチームワークやリーダーシップ、リスクマネジメントの能力などを評価する必要があります。

コンピテンシーを導入する際には、組織の特性を踏まえたカスタマイズと、従業員の深層にある能力や価値観を評価することが不可欠です。

 

まとめ

コンピテンシーの概念と活用方法について深く掘り下げてきました。最後に、重要なポイントを簡潔におさらいしましょう。

 

  1. コンピテンシーは知識、技術、能力、行動特性の総称
  2. モデル設定には柔軟性が必要
  3. さまざまな実務で活用できる
  4. 評価基準の導入には慎重さが求められる

 

この記事を通じて、職場や実務での活用方法、評価基準の導入検討について考える一助となれば幸いです。コンピテンシー評価の導入を検討されている方は、この記事を参考にして、組織にとって最適な方法を見つけてください。