「大規模成長投資補助金」新工場の設置に活用できる方法を徹底解説
経済産業省では中堅・中小企業が新たに工場を設置する際などに活用できる「大規模成長投資補助金」を運営し、支援しています。
この記事では、大規模成長投資補助金について詳しく解説します。
ポイントは次の3点です。
- 大規模成長投資補助金とは
- 目的・概要、補助対象要件、補助対象者、補助率・補助上限額など主要項目について
- 公募スケジュールと、気になる採択率は
新工場の設置に活用できる「大規模成長投資補助金」とは
大規模成長投資補助金の正式名称は「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」で、各地域で事業を展開して雇用を支える中小企業を支援するために、国(管轄:経済産業省)が運営している補助金です。
予算の総額は、令和8年度までの国庫債務負担を含めて3,000億円と大規模であり、このうち令和5年度の補正予算で1,000億円が計上されています。
この事業規模は同趣旨の補助金としては過去に例がなく、それだけ大きな期待が寄せられています。
事業目的
大規模成長投資補助金は、地域の雇用を支える中堅・中小企業が、大きな課題となっている人手不足などに対応し、さらに成長を目指して実施する大規模な投資を促進することで、各地域での持続的な賃上げの実現を目的としています。
事業概要
この事業は、中堅・中小企業が持続的に賃金を上げることを目指しています。そのため、人手不足という大きな問題を解決するために、省力化による労働生産性の向上や事業規模の拡大を支援します。具体的には、新しい工場を建てたり、大規模な設備投資を行ったりする際に補助を提供しています。
補助対象要件
大規模成長投資補助金における補助対象要件は次の2項目となります。
- 投資額10億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)であること
対象項目は下記のとおりです。
- 生産設備などの導入に必要な範囲内での建物費(拠点新設・増築など)
- 機械装置費(器具・備品費を含む)
- ソフトウェア費
上記の3費目で、合計10億円以上を投資することが必要です。
- 補助事業の終了後3年間の対象事業に関わる従業員1人当たり給与支給総額の伸び率(年平均成長率)が、事業を実施する場所の都道府県での直近5年間における最低賃金の年平均成長率以上であること
全国各地域における最低賃金は、政府の意向などもあってここ最近は高い上昇率を示していますが、この補助金では、それ以上の数値で賃上げを求めるという趣旨です。
年平均成長率をみると、全国各地域における最高の地域で3.4%、最低の地域で2.5%(*)となっており、本補助金ではこうした数値を踏まえ、概ね4.0%を目指す指標としています。
なお、補助金の申請時に示した賃上げ目標を達成できなかった場合、未達成率の状況に応じて補助金の返還を求められる場合があるので注意が必要です。
(*)下図をご参照ください。
補助対象者
補助対象者は、中堅・中小企業(常時使用する従業員数が2,000人以下の会社)となります。
なお、補助対象は申請企業単体となりますが、一定の要件を満たす場合には中堅・中小企業を中心とした共同申請(コンソーシアム)も対象です。
また、大企業や、農作物の生産自体に関するものなど、いわゆる1次産業の場合は補助対象外となります。
補助対象経費
補助対象経費は以下の5項目となります。
1. 建物費 |
補助事業を実施するために使用する生産施設や加工施設、倉庫など、事業計画に必要な建物の建設・増改築・中古建物の取得に要する経費 |
2. 機械装置費 |
・補助事業を実施するために使用される機械装置、工具・器具の購入・製作や借用に必要な経費 ・上記に付随して実施する、改良・修繕、据付けや運搬に必要な経費 |
3. ソフトウェア費 |
・補助事業を実施するために使用される専用ソフトウェアや情報システム等の購入・構築や借用、またクラウドサービスの利用に必要となる経費 ・上記に付随して実施する、改良・修繕に必要な経費 |
4. 外注費 |
補助事業を実施するために必要な加工や設計、検査などの一部を外注する際の経費 |
5. 専門家経費 |
補助事業を遂行するために依頼した専門家に支払われる経費 |
補助率・補助上限額
補助率と補助上限額は下表のとおりです。
補助率 |
1/3以内 |
補助上限額 |
50億円 |
公募スケジュール
公募スケジュールは下記のとおりです。
【第1次公募】
公募開始:令和6年3月6日
公募締切:同4月30日(火)17時
採択発表:6月~7月頃
※すでに第1次公募の申請受付は終了しています。
【第2次公募】
公募開始(予定):令和6年6月下旬
公募締切(同):同8月下旬
採択発表(予定):同10月~11月頃
第1次公募(終了)におけるスケジュール全体のイメージは下図のとおりです。第2次公募についても申請の流れは第1次と同様となりますので、ご参照ください。
スケジュール>>>
令和6年3月6日 |
4月30日 |
プレゼンテーション 6月3日~ 6月7日 |
6月中旬目途 |
最長令和8年12月末まで |
補助事業終了後 3年間 |
|
公募開始 |
公募 締め切り |
審査 (プレゼンテーション含む) |
採択発表 |
以降 交付決定 |
補助事業期間 |
賃上げのフォローアップ |
【事業実施期間】
本補助金の事業期間は、交付決定日から3年以内とされています。
これを第1次公募の状況に当てはめると、第1次公募の採択発表が令和6年6月~7月なので、第1次公募の交付申請は同年の7月以降となります。交付審査に1ケ月程度必要だと想定すると、交付決定日は本年8月1日以降となります。
ただし、公募要領では「最長で令和8年12月末まで」と規定されているので、事業期間は規定の3年以内ではなく、実質的には2年3ケ月程度となります。
工場や物流拠点などを新たに設置する場合には、工期が1年以上必要となる場合もあるので、余裕を持ったスケジュールを設定することがポイントです。
気になる採択率
大規模成長投資補助金の予算額は上述のとおり総額3,000億円となっています。
そして、公式サイト上(本年5月17日付)で、第1次公募における申請数と書面審査の結果について発表されています。それによれば、有効申請数は本年4月30日17時の第1次公募締切時点で736件となっています。
この数値は、過去に例のない事業規模である本補助金への期待感を考慮すれば、当初の想定よりも少ない状況となっています。
ただし、状況を分析すれば、初回ということでの「様子見」なども背景として考えられることや、第2次公募は1次公募で不採択となった企業の再申請などもあるため、第1次を上回る(1,000件以上)応募が見込まれます。
採択状況について直接事務局(下記)に問い合わせて確認しました(6月13日)。その結果、事務局の見解は次のとおりです。
「採択についてはあくまでその申請内容により決定され、倍率(採択率)という基準は設けていない。なお、第1次公募に関する採択企業名と採択件数は後日公式サイト上で公表する(公表日は不明)。」
事務局の判断を尊重すれば、申請にあたってしっかりと資格・要件などを十分満たした上で、過不足なく正当に申請されれば、予算の枠内でかなりの確率(*)で採択されるものと見込まれます。
(*)一般的な見方として、補助金全般における採択率は概ね40%~50%といわれています。
その根拠として、主な補助金の採択率を下記に示します。
補助金の名称 |
採択率 |
記事 |
ものづくり補助金 |
50.1% |
1次~16次の平均 |
小規模事業者持続化補助金 |
47.5% |
令和元年~令和2年の平均 |
事業再構築補助金 |
46.5% |
4次~16次の平均 |
問い合わせ先
本事業の応募に関する問い合わせ先は次のとおりです。
事務局 |
中堅・中小成長投資補助金サポートセンター |
電話 |
050-3667-8453 |
営業時間 |
平日午前10時~午後5時 (土曜、日曜、祝日、年末年始を除く) |
まとめ
厳しい経営環境に直面する多くの中堅・中小企業を支援するために、経済産業省が運営する「大規模成長投資補助金」について詳しく解説しました。
この補助金は事業規模も大きく、中堅・中小企業が新たに工場を設置する際などに活用でき、多くのメリットがあります。
この記事を読んで、自社で活用可能な事業者は是非お役立てください。
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