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コーポレートガバナンス入門:基礎から事例紹介まで

コーポレートガバナンスとは


コーポレートガバナンスとは、企業経営を適正に行うために必要な体制やルール、仕組みのことです。

 

内部統制との違い


内部統制とは、企業の目標に対して、業務の効率性、財務の信頼性、法令遵守などを支援する仕組みやプロセスのことです。

一方、コーポレートガバナンスは内部統制の枠組みを監視する役割を担います。

内部統制が「どのように事業を運営するか」に注目するのに対し、コーポレートガバナンスは「良好な統治構造をどのように築くか」という視点から考えます。

 

コンプライアンスとの違い


コンプライアンスは、企業が法律や規則などを遵守することを指します。

企業が社会的な責任や倫理規範に従うことを保証するためのものであり、コーポレートガバナンスの一環として位置づけられます。

 

CSRとの違い


CSRは、企業が利益だけでなく、社会的責任を果たすために行う活動のことであり、環境保護、社会貢献などが含まれます。

CSRはコーポレートガバナンスの枠組みの中で重要な位置を占めており、社会的貢献に特化した概念です。

一方、コーポレートガバナンスは企業運営と管理の全般的な枠組みになります。

 

コーポレートガバナンスは、企業が直面する多様なリスクを管理し、長期的な成長を目指すために不可欠な要素です。

内部統制、コンプライアンス、CSRといった概念と密接に関連しており、より高いレベルの企業経営を実現するための枠組みです。


コーポレートガバナンスの目的


企業が健全な状態を維持しながら長期的に成長をするためには、コーポレートガバナンスが欠かせません。

 

経営陣による不祥事を防ぐ


企業の信頼を損なう最大の要因の一つが、経営陣による不祥事です。

不正会計や不適切な経営判断が大きな社会問題となる事例は数多くあります。

過去の事例から学び、良好なガバナンス体制を確立することで、経営陣の行動を監視し、不正行為のリスクを減少させることができます。

 

サステナビリティへの取り組みを促進


近年、企業活動における環境への配慮や社会的責任の遂行が求められています。

コーポレートガバナンスがサステナビリティへの取り組みを促進する役割を担うことで、長期的な視点で社会と調和しながら成長することが可能です。

 

利益をステークホルダーに還元する


コーポレートガバナンスが確立されていることにより、利益を株主や従業員、地域社会などのステークホルダーに還元できます。

適切なガバナンス体制を構築することで、利益配分の透明性が高まり、企業とステークホルダーとの間に信頼関係を築くことができます。

 

コーポレートガバナンスを適切に機能させることで、企業が直面する課題への対応が可能です。

これらを達成するためには、コーポレートガバナンスを企業文化の中に根付かせる必要があります。


コーポレートガバナンスの強化方法


コーポレートガバナンスの強化は、リスク管理と企業成長を両立するための重要なプロセスです。

 

内部統制を強化する


内部統制の強化は、不正行為の防止、財務の信頼性向上、事業の効率化を図る上で重要です。

内部統制システムを確立し、リスク管理の仕組みを整備することで、潜在的な問題を早期に特定し、対処することが可能になります。

 

社外取締役・監査役および委員会の設置


社外取締役や監査役、委員会を設置することは、経営の透明性を高め、経営陣のチェック機能を強化するために有効な手段です。

社外取締役や監査役は、経営判断に対する客観的な視点を持つことで、株主の利益を守る役割を果たします。

また、委員会(例:監査委員会、報酬委員会、指名委員会など)の設置においては、専門的な知見を持つメンバーによる検討が行われることで経営の質が向上するでしょう。

 

執行役員制度の導入


執行役員制度を導入することで、経営の迅速化と機能の明確化を図ることができます。

執行役員制度は、取締役会が経営方針や重要な経営判断を行う一方で、執行役員が日々の事業運営を担います。

これにより、取締役会はガバナンスと監督に専念することが可能となり、経営効率を高めることが可能です。

また、執行役員に対する評価と報酬の透明性を確保することで、目標達成に向けた動機付けを促進できます。

 

社内での判断基準の明確化および周知徹底


効果的なガバナンスを実現するためには、社内での判断基準を明確にし、それを徹底して周知することが重要です。

判断基準には、倫理規範の策定やコンプライアンスポリシーの明確化が含まれます。

企業の価値観やビジョン、行動規範を文書化し、全従業員に対して継続的に教育をすることで、一貫性のある意思決定プロセスを確立できます。

 

CEO不参加で取締役会を実施


CEO不参加の取締役会を実施することは、企業ガバナンスを強化するための効果的な手法の一つです。

CEOが取締役会に参加しないことで、より自由に意見を交換し、独立した視点から企業の戦略や経営判断について議論できます。

これにより、取締役会の独立性が強化され、経営陣に対する健全なチェック機能が働くようになります。

 

これらの取り組みを通じて、企業経営におけるリスクを軽減し、ステークホルダーからの信頼を獲得することができるでしょう。


コーポレートガバナンスのメリット


ここでは、コーポレートガバナンスがもたらす主なメリットについて解説します。

 

ステークホルダーからの信頼向上

コーポレートガバナンスを強化することにより、ステークホルダーからの信頼を得ることができます。

株主、投資家、顧客、従業員など、企業に関わる人々が運営状況を詳しく理解することで、信頼性が高まり、企業のブランド価値や市場での競争力が向上するでしょう。

 

経営陣・管理職の不正によるリスクの低減


内部統制を強化し監査機能を確立することで、経営陣や管理職による不正行為のリスクを低減。

内部監督体制を強化し、経営の透明性を高めることで、潜在的な問題を未然に防ぐことが可能になります。

 

融資・出資を受けやすくなる


適切なコーポレートガバナンスがあることで、融資や出資を受けやすくなるメリットがあります。

投資家や金融機関は、リスクを最小限に抑え、透明性を確保できる企業に対して、出資する傾向があります。

ガバナンス体制を備えることで、資金調達の機会を増やし、有利な条件で融資を受けられるでしょう。


コーポレートガバナンスのデメリット


コーポレートガバナンスは現代の企業運営に不可欠ですが、いくつかのデメリットもあります。

 

事業展開のスピードが鈍くなる


厳格なコーポレートガバナンスがあることで、経営の意思決定に時間を要してしまい、結果としてビジネスチャンスを逃す可能性があります。

対処法としては、意思決定プロセスの効率化を図ることが重要です。

たとえば、デジタル技術の活用で迅速かつ必要な情報提供を行うシステムの構築や、決定権を適切に委譲することで、スピーディーな意思決定が可能になります。

 

仕組みづくりにコストが掛かる


内部監査体制の確立や教育プログラムの導入には、相応のコストが掛かります。

必要不可欠なコストを把握して、効果的なリスク管理を行う必要があります。

また、長期的な視点を持ち、ガバナンスの強化が企業価値の向上にどのように貢献するかを評価することが重要です。

 

ステークホルダーに依存する


コーポレートガバナンスを強化することで、ステークホルダーの影響を受けやすくなる場合があります。

ステークホルダーとのコミュニケーションには透明性を保ちつつ、目標とのバランスを適切にとることが重要です。


コーポレートガバナンスの注意点と対処法


ここでは、コーポレートガバナンスにおける注意点と、具体的な対処法について解説します。

 

内部統制の強化がおろそかになるリスク


内部統制の強化は、不正防止やリスク管理に不可欠ですが、日常業務の忙しさの中でおろそかになることがあります。

リスクに対処するためには、定期的な内部監査を実施し、有効性を評価することが重要です。

また、従業員に対して教育を継続的に行い、内部統制の意識を高めることも効果的です。

 

社外取締役や社外監査役の人材不足


社外取締役や社外監査役は、経営の透明性を確保し、経営陣の監督を強化する上で重要な役割を果たします。

しかし、経験豊富でレベルの高い社外取締役や監査役を確保することは容易ではありません。

専門の人材紹介会社を利用する、業界団体と連携するなどの対策が必要です。

 

子会社や関連会社へコーポレートガバナンスが浸透しにくい


多くの企業では、子会社や関連会社へのガバナンスの浸透が難しいという課題に直面しています。

対策として、グループ全体で統一されたガバナンス基準を確立し、定期的に監査や評価を行うことが効果的です。

また、グループ内でのベストプラクティスの共有や、子会社や関連会社の管理職に対する継続的な教育やトレーニングを実施することが重要です。

 

注意点と対処法を理解し、適切に実施することで、より強固な組織運営を実現し、ステークホルダーからの信頼を獲得し続けることができます。

重要なのは、これらの対処法を継続的に見直し、現状や外部環境の変化に適応していくことです。


コーポレートガバナンスを実施する企業の事例


ここでは、コーポレートガバナンスを効果的に実施している具体的な企業を取り上げて、その取り組みと成果について解説します。

参考リンク<日本取締役協会:コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2023 各社発表資料>

 

荏原製作所


株式会社荏原製作所は、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2023」で最高栄誉であるGrand Prize Company(大賞)を受賞しています。

これは、荏原製作所が中長期的な健全な成長を遂げるためのコーポレートガバナンスの取り組みを高く評価された結果です。

 

同社の取り組みとして、「守り」のガバナンスから「攻め」のガバナンスへと移行し、経営の実行力と発展を実現したことが高く評価されています。

独立社外取締役を早期に導入し、指名委員会などの設置によりガバナンス構造を改革、さらにROIC経営を導入し、知財や生産に関するROICへと発展させました。

 

長期ビジョンと中期経営計画に基づき、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指しており、ガバナンスの改革と経営の実行力を通じて、企業価値のさらなる向上と持続可能な社会への貢献を図っています。

 

※ROICとは
ROIC(Return On Invested Capital)とは、「投下資本利益率」とも呼ばれ、企業が投資した資本に対してどれだけの利益を生み出しているかを示す指標です。
この数値は、企業が資本をどの程度効率的に利用しているかを測るために用いられ、ROICが高いことは資本を利益に変える能力に優れた企業であることを意味します。

 

味の素


味の素株式会社は、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2023」で「Winner Company」に選出されています。

この賞は、中長期的に健全な成長を遂げている企業を後押しする目的で設けられたものであり、味の素のコーポレートガバナンス体制が高く評価されています。

具体的には取締役会の多様な構成や、取締役会と経営会議との密接な意思疎通・運営が高い評価を受け、受賞にいたりました。

 

組織の縦割り化を打破するため、経営会議にも外部の専門家を意識的に招へいしており、法定3委員会(指名、報酬、監査)の導入や、取締役会議長や各委員長を独立社外取締役で運営するなど、食品業界では珍しい指名委員会等設置会社としての取り組みが行われています。

 

味の素グループは、コーポレートガバナンスをASV(Ajinomoto Group Shared Value)経営の強化と2030年の目標実現のための重要な基盤と位置づけました。

これには、「ステークホルダーの意見を反映させる適切な執行の監督」と「スピード感のある業務執行」の両立が含まれています。

「味の素グループポリシー」を守り、内部統制システムの整備と適正な運用に取り組むとともに、サステナビリティを積極的なリスクテイクと捉え、持続的に企業価値を高める体制を強化しています。

 

セイコーエプソン


セイコーエプソン株式会社(以下、エプソン)は、味の素と同じく「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2023」において「Winner Company(入賞)」を受賞。


エプソンは「経営理念・Exceed Your Vision」を礎に、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を可能にするコーポレートガバナンスの充実と強化に継続的に取り組んでいます。

 

同社では、取締役10名中6名を独立社外取締役で構成し、任意の指名と報酬委員会の長を社外取締役が務める体制を敷いており、サクセッションプランの実行やガバナンスの実効性向上に向けた工夫をしています。

執行役員や候補者による経営会議で討議される中長期戦略は社外取締役が閲覧可能であり、組織的にサクセッション対象者が社外取締役の目に触れるような運営が行われています。

 

エプソンのコーポレートガバナンス取り組みは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指す基盤です。

社外取締役の積極的な活用や、サクセッションプランの透明性を高める取り組みは、組織の縦割り化という課題を解消し、経営の迅速化と効率性の向上に寄与しています。


まとめ


コーポレートガバナンスは企業経営に必要不可欠です。この記事で解説した内容を以下にまとめます。

 

1.内部統制、コンプライアンス、CSRと明確に区別する
2.不祥事防止、サステナビリティ促進、利益還元を目指す
3.内部統制の厳格化、社外取締役・監査役設置が鍵になる
4.信頼向上、リスク低減、資金調達容易化がメリット
5.スピード感の欠如、コスト増、ステークホルダー依存がデメリット
6.内部統制強化のリスク、人材不足、浸透の難しさが注意点

 

コーポレートガバナンスは企業価値の向上に直結します。

この記事を通じて、コーポレートガバナンスの理解が深まり、具体的に分析や策定をする一助となれば幸いです。