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PEST分析とは?事例とコツを具体的に解説

 

ビジネスの世界に多くある不確定要素は、どのように理解し、自社の戦略に組み込むことができるのでしょうか?この記事では、外部環境の主要因である政治、経済、社会、技術の4つの要素を分析する手法『PEST分析』について、詳しく解説します。

 

  1. PEST分析の基本概念
  2. PEST分析の手順と方法
  3. 事例を通じたPEST分析の活用方法

 

 

PEST分析とは

PEST分析は、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの外部環境を分析するフレームワークです。ビジネス戦略を立案する際に、これらの要素が業績や戦略にどのような影響を与えるかを把握するために用いられます。

 

PEST分析の4要素

PEST分析の各要素は以下の4つに定義されます。

  • 政治(Politics):政府の政策、税制、法改正、規制強化or緩和など
  • 経済(Economy):経済成長、失業率、インフレ率、為替レートなど
  • 社会(Society):人口動態、教育、ライフスタイル、文化、宗教など
  • 技術(Technology):新技術の発展、研究開発、特許、AI技術など

 

PEST分析の必要性

ビジネス環境は常に変化しており、迅速に対応する必要があります。PEST分析は、企業経営においてそのような変化を先読みし、外部環境の変化によって生じるリスクを軽減し、ビジネスチャンスを最大限に活用することができます。

例えば、2020年に起きたイギリスの欧州連合離脱は多くの企業に影響を与えましたが、このような急激な政策変更が予想される場合においても、PEST分析によって事前にその影響を評価し、企業戦略を調整することができます。

 

PEST分析の目的

PEST分析の主な目的は、市場のトレンド、法改正のタイミング、新技術のリリースなど、自社の運営に影響を与える外部要因を識別して、戦略的な計画を立てることにあります。
さらに、これらの情報を基に、新しい市場への参入や新製品の開発など、長期的なビジネス機会を探求することもできます。

 

マクロ環境分析とミクロ環境分析

PEST分析はマクロ環境を分析する手法であり、自社がコントロールできない外部要因を評価します。これに対して、ミクロ環境分析は自社がある程度コントロールできる顧客、競合他社、サプライヤーなどを分析します。これら2つの分析を組み合わせることで、より正確で包括的な分析をすることができます。

 

定義

主な要素

影響範囲

対応

マクロ環境

直接コントロールできない社会環境

政治、経済、社会、技術(PEST分析に基づく)

業界全体や社会全体

予測による対応が必要

ミクロ環境

ある程度コントロールできる競争環境

顧客、競合他社、サプライヤー、販売チャネルなど

特定の企業や競争相手

戦略を立て、直接対応することが可能

PEST分析は、自社が外部環境の変化を的確に把握し、それに応じた効果的な戦略を立案するために不可欠です。この4つの要素を把握することで、市場での優位性を確立し、継続的な成長をすることが可能になるでしょう。

 

PEST分析の4要素

PEST分析は、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの要素から構成されます。ここでは、各要素について詳しく解説します。

 

政治的要因(Politics)

政治的要因には、政策、法律、税制、規制強化・緩和、政治の安定性などが含まれます。これらは、ビジネスへ直接的な影響を与えます。例えば、2022年1月に施行された電子帳票保存法により、多くの企業が電子保存に対応するためのシステム導入を行い、業務プロセスの見直しを行いました。

このような政策の変更は、特に情報技術やコンプライアンスが重要視される業界では注意が必要です。企業は政策の変更や規制緩和・強化などの情報を迅速に把握し、適応することが求められます。政府が発表する新しい規制や政策は、PEST分析を通じて、企業戦略に組み込まれるべきです。

 

経済的要因(Economy)

経済的要因には、経済成長、インフレ率、為替レート、失業率などが含まれ、これらは消費者の購買力や企業の投資意欲に影響を及ぼします。例えば、利息率の低下は企業や消費者の借入れを促進し、経済活動を活性化させることがあります。

経済的要因の波及効果は多岐にわたり、製造業においてインフレ率の上昇は原材料のコスト増加を意味し、最終製品の価格に大きく影響を与える場合があります。インフレ率の変動は企業の利益率に直接的な影響を与えるため、PEST分析において経済的要因を詳細に検討することは非常に重要です。

また、世界各国の経済政策や経済状況の変動も、グローバルに展開する企業にとっては避けて通れない課題です。為替レートの変動により、輸出入のコストが大きく変わることがあり、これが企業の収益性に影響を与えることも少なくありません。

 

社会的要因(Society)

社会的要因は、人口動態、教育、宗教、ライフスタイルの変化などが含まれ、これらは消費者のニーズや市場の動向に深く関わっています。例えば、健康意識の高まりは、オーガニック食品やフィットネス商品の需要を増加させることがあります。

厚生労働省が定期的に発表している人口動態統計や、文部科学省が公開している教育関連の統計データは、企業が社会的要因を分析する際の貴重な情報源となります。これらのデータを利用することで、特定の地域やセグメントにおける消費者行動の変化を予測し、製品やマーケティング戦略を最適化することができます。

 

技術的要因(Technology)

技術的要因は、新技術の開発やAI、オートメーション化、ビックデータ解析などの技術革新であり、製品開発、製造プロセス、営業手法などに大きな変革をもたらすことがあります。例えば、SNSの普及によりマーケティング戦略における宣伝広告の手段が、TVやラジオといった広告チャネルから、FacebookやInstagramといったSNSプラットフォームに変わってきています。

技術的進歩に関する情報は、技術ジャーナルや業界誌の購読、業界団体が発行する技術報告書、学術論文、特許情報などから入手可能です。技術的要因に関する最新の情報を常に収集することで、業界内での競争優位を確保するための技術戦略を練ることが可能になります。

 

これらの要素は相互に関連しており、一つの要素が他の要素に影響を与えることも少なくありません。したがって、PEST分析を行う際には、これらの要素を個別に分析するだけでなく、相互作用を考慮することが重要になります。

 

PEST分析のメリットとデメリット

PEST分析は外部環境を分析する有効なフレームワークですが、メリットとデメリットの両方が存在します。

 

PEST分析のメリット

  1. 戦略的な洞察
    市場動向、法改正、技術開発などの外部要因を客観的に理解できるため、これらの要因が自社のビジネスに与える影響を予測し、適切な戦略を立てることができます。

    たとえば、環境規制の強化に伴い、エコな製品やサービスの需要が高まる可能性があります。実例として、近年の自動車業界では電気自動車への移行が加速しています。欧州を始めとする各国政府の環境に対する規制強化を背景に、テスラのような企業は市場での優位性を築いています。

  2. リスク管理
    分析により潜在的なリスクを特定し、それらに対処するための戦略を立案できるため、将来の不確実性に対する準備ができます。

    不測の事態に備えることで、企業は競争上の不利を回避し、業績を維持することができます。内閣府や日本経済研究センター、経済協力開発機構(OECD)などが提供する経済予測は、日本国内や世界的な市場の変動に備えるうえで重要な情報源となります。

  3. 機会の特定
    外部環境の変化は、新たなビジネスチャンスを生み出すことに繋がるため、これらの機会を見つけ出し、利用するための基盤となります。

    また、外部環境の変化に迅速に対応することで、市場における優位性を確立して企業のブランド価値を高めることができます家具メーカーのイケアは、リサイクル素材を用いた製品のラインナップを拡大していますが、現在の環境問題への意識の高まりを受けて、このような取り組みが環境意識の高い消費者から高い評価を受けています。

 

PEST分析のデメリット

  1. 情報の過多
    外部環境には無数の要因が関わっており、すべての情報を分析できないため、重要な情報を見落とすリスクがあります。

  2. 予測の困難さ
    政治や経済の状況は急速に変化します。未来を正確に予測することは難しく不確実性が伴います。

  3. 主観性の問題
    分析をする人の知識や解釈に大きく依存するため、分析結果に主観性が入り込む場合があります。

  4. 具体性の欠如
    PEST分析では、広い範囲の情報を扱うため、具体的な戦略や行動計画に落とし込むのが難しいという問題があります。

  5. 内部要因の軽視
    PEST分析は外部環境に焦点を当てていますが、内部環境の要素は考慮されません。企業の資源や能力、組織文化などもビジネス戦略には大きな影響を与えるため、内部要因を軽視すると不完全な戦略になるリスクがあります。

 

対処法

これらのデメリットには以下のような対策が有効です。

  • 定期的なレビュー
    外部環境は常に変化するため、定期的に実施。

  • 複数の情報源を利用
    情報の正確性を確保するために、信頼できる複数の情報源からデータを収集。

  • チームでの分析
    主観性を最小限に抑えるために、複数人のチームで分析。

  • SWOT分析の併用
    分析結果を基にSWOT分析を併用し、強みや弱み、機会、脅威を明確にすることも有効。

  • 内部環境分析
    リソース・ベースト・ビュー(RBV)のようなフレームワークを利用し、企業の内部資源と能力を評価する。

メリットを最大限に活用しつつ、デメリットに適切に対処することで、外部環境の変化に効果的に対応することができます。

 

PEST分析の事例

ここでは、業界別にPEST分析を行い、その分析結果をもとに対応策とビジネス戦略を立案してみましょう。

 

自動車業界のPEST分析

分析項目

PEST分析結果

対応策・ビジネス戦略

政治的要因

政府による環境規制、排出ガス規制に適合するために、自動車メーカーは電気自動車(EV)やハイブリッド車への投資を加速

・EVやハイブリッド車の研究開発に増資

・新モデルを市場に積極的に投入

経済的要因

経済成長の鈍化や円安は、特に輸出に依存する自動車メーカーに大きく影響

・為替リスクを管理するための金融戦略を強化

・内需拡大にも注力

社会的要因

アクセルとブレーキの踏み間違い事故により、消費者はより安全な車を求める傾向に

・安全技術の開発に注力

・自動ブレーキシステムや事故防止技術の標準装備

技術的要因

自動運転技術やコネクテッドカーの進化により、自動車業界の新たなビジネスモデルが誕生

・自動運転技術の実証実験

・コネクテッドカーの開発を加速

・新しいサービスやビジネスモデルを創出

 

食品業界のPEST分析

分析項目

PEST分析結果

対応策・ビジネス戦略

政治的要因

食品安全の規制強化により、品質管理コスト増大

・品質管理システムの強化と透明性の向上

・社内コンプライアンス強化と監査の実施

経済的要因

原油価格の高騰や円安、気候変動による農産物の収穫量の減少を受け、原材料コストは増加

・コスト効率の良いサプライチェーンの構築

・代替原材料の調査

・価格変動のリスクヘッジ戦略

社会的要因

健康意識の高まりにより、オーガニック食品や低カロリー食品のニーズ拡大

・健康志向の製品ラインの拡張

・オーガニック認証の取得

・健康を意識した商品CM

技術的要因

食品通販サイトの増加により、業界のマーケティング戦略に変化

・オンライン販売チャネルの強化

・デジタルマーケティング戦略の採用

・顧客体験の向上を目指した技術投資

 

不動産業界のPEST分析

分析項目

PEST分析結果

対応策・ビジネス戦略

政治的要因

不動産取得に関する規制強化(2022年9月「重要土地等調査規制法」の施行)

・法律に基づく適切な手続き

・規制に適応するための戦略強化

経済的要因

都市部への人口集中とそれに伴う不動産需要の増加、および外国資本の流入増加

・都市部の開発プロジェクトへの投資増加

・利便性の高い物件への集中

・国外の投資家を対象としたマーケティング戦略の強化

社会的要因

高齢化社会に伴う住宅ニーズの変化や、テレワーク普及による住宅ニーズの多様化

・高齢者向け住宅の開発

・在宅勤務に適した住宅の提供

・住宅のリフォーム市場への参入

技術的要因

不動産業界でも活用できるAI、ブロックチェーン、オンラインプラットフォームなどの新技術開発

・AIによる効率的な物件管理

・ブロックチェーン技術を活用した不動産契約の導入

・SNSを通じた販売戦略の強化と顧客サービスの向上

 

観光業界のPEST分析

分析項目

PEST分析結果

対応策・ビジネス戦略

政治的要因

日本政府による、特定の国々からの短期滞在の外国人に対するビザの緩和

・ビザ緩和対象国の旅行者に対する広告展開

・業界団体と政府が連携して、柔軟なビザ政策の継続と改善を図る

経済的要因

世界的な景気回復や所得水準の向上、および歴史的な円安

・コストパフォーマンスを前面に出した広告戦略

・海外マーケットでの積極的なプロモーション

・為替レートを利用した価格設定の見直し

社会的要因

日本の文化や芸術に対する注目度の向上、および交通インフラの便利さと安全性

・安全性の高い環境をPR

・伝統文化や現代文化イベントの宣伝

・文化体験型プログラムの導入

技術的要因

SNSの普及による日本文化の発信と、翻訳ソフトの技術力向上による言語の壁の低減

・旅行体験を反映したデジタルコンテンツの拡充

・訪日外国人向けのアプリやウェブサイトの充実

・多言語対応の自動翻訳ツールの導入

 

物流業界のPEST分析

分析項目 PEST分析結果 対応策・ビジネス戦略

政治的要因

労働基準法の改正により、トラックドライバーの時間外労働が原則月45時間、年間360時間と規定

・運転手の健康と労働環境の改善

・業務効率化と自動化技術の導入

・政府のガイドラインに準じた企業運営

経済的要因

円安の影響により、国際物流コストの増加

・為替リスク管理の強化

・コスト効率の良い輸送ルートと方法の選定

・国内外のマーケットでの競争力を保つための戦略的価格設定

社会的要因

労働力不足による物流業界の人手不足問題、トラックドライバーの高年齢化

・運転手育成と従業員満足度の向上

・職場環境の改善とキャリアパスの提供

・外国人労働者の活用

技術的要因

物流業界のデジタル化と自動運転技術の進展

・AIやロボティクスを活用した物流プロセスの自動化

・データ分析と最適化による運用効率の向上

・自動運転技術を用いた車両の段階的導入を計画

これらの分析はあくまで一つの事例ですが、PEST分析を行うことで業界の動向を理解し、変化する市場に柔軟に適応することが可能となります。

 

PEST分析のコツ

PEST分析を効果的に行うためには、いくつかのコツがあります。

 

仮説思考でアプローチする

新しい政策や技術が導入された場合の影響や、経済の変化が消費者に与える影響など、各要素に焦点を当てた仮説を立てることで、分析の方向性を明確にし、関連するデータや情報を効率的に収集することができます。

 

長期的なトレンドを意識する

短期的な出来事だけでなく、長期的なトレンドを意識し、その影響を分析することが重要です。技術の進化、人口の推移、価値観の変化など、ビジネス戦略に大きな影響を及ぼすトレンドを把握することで、将来のビジネス環境を予測し、長期的な戦略を立てるための基盤を築くことができます。

 

機会発見のコツ

PEST分析でビジネスチャンスを発見するためには、分析の各段階で次のような質問を自問自答することが効果的です。

  • この外部要素は、新しい市場や顧客を開拓する機会になるか?
  • 現在のビジネスモデルや製品を変革する機会になるか?
  • このトレンドは、競合他社に比べて自社独自の優位性を築くことができるか?

 

PEST分析を行う際に、これらのコツを念頭に置くことで、より戦略的な考察ができます。

 

PEST分析の注意点

PEST分析を利用するにあたって、いくつかの注意点があります。

 

短期の分析には向いていない

PEST分析は主に長期的な視点から外部環境を評価するための手法なので、短期間に起こりうる変化を捉えるには不向きな場合があります。例えば、事件や自然災害などの突発的な事象は、PEST分析で予測することが困難なので、短期的なビジネス戦略も立案したい場合は、リアルタイム市場監視など他の手段を併用することを推奨します。

 

内部の環境分析ではない

PEST分析は外部環境に焦点を当てています。自社の内部環境やリソースに関する分析はSWOT分析などのフレームワークが適しています。

外部分析と内部分析を合わせて行うことで、より包括的な戦略を立案することが可能になります。

 

手段の目的化

PEST分析を行うこと自体が目的にならないよう注意が必要です。分析はあくまでビジネス戦略と具体的な行動計画を立てることが最終的な目的です。また、分析結果の解釈には主観が入り込むことがあるため、複数の視点から評価を行い、客観性を確保することも重要なポイントです。

 

PEST分析を行う際には、これらの注意点を念頭に置くことで、より有効な戦略立案のための洞察を得ることができます。

 

PEST分析の具体的な手順

 

情報収集

分析の第一歩は、関連する情報収集です。政府の報告書、業界分析、経済予測、社会動向の調査、新技術に関する論文など信頼できる情報源のデータを優先し、最新の情報を得ることが重要です。

 

PESTの4要素に分類

収集した情報を、政治、経済、社会、技術の4つの要素に分類して、各要素が現在および将来のビジネスにどのような影響を与えるかを考慮します。

 

事実と解釈に分類

収集した情報を事実と解釈に分類します。事実は具体的なデータや統計に基づくものであり、解釈はそのデータがビジネスに与える意味合いや影響を分析したものです。分類することで、客観性を保ちながら、情報の背後にあるトレンドやストーリーを理解することができます。

 

機会と脅威に分類

次に、分析を通じて特定された要素を機会と脅威に分類します。機会は市場の成長や新たなニーズなど、自社が利益を得るために利用できる要素、脅威は競争の激化や規制の強化など、ビジネスの成長を妨げる要素です。

 

短期と長期に分類

機会や脅威を、短期的(1年以内)、または長期的(1年以上)に分類します。分類することにより、ビジネス戦略を検討する際、優先順位付けに役立ちます。

 

事業戦略に落とし込む

最終的に、分析の結果をもとに、具体的なビジネス戦略を策定します。特定された機会を最大限に活用し、脅威に対処するための短期的対策と長期的戦略の両方を考慮に入れて計画を策定することが重要です。

 

まとめ

今回の記事では、PEST分析の基礎から具体的な手順までを詳しく解説しました。

  1. PEST分析は外部環境の分析ツール
  2. 政治、経済、社会、技術の4要素を評価
  3. 分析を通じてビジネス機会と脅威を特定
  4. 短期・長期の戦略立案に役立つ
  5. コツと注意点を念頭に置いてPEST分析を実践する

 

この記事を活用して、PEST分析を実践し、外部環境の変化に対応する戦略を立ててみてはいかがでしょうか。今回紹介した内容を参考にして、自社のビジネス環境を分析し、戦略を練る第一歩としてください。